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短編集
本当は、彼は勇者だったんです(1)
異世界トリップした美形×もくもくと働く男前平凡

本来の目的を忘れたBL

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【本当は、彼は勇者だったんです】






その日の朝は、いつもより少し早く目が覚めた。
しかし朝と言ってもまだ外は薄暗く、モンスター避けを張っていた畑のあたりが妙に騒がしかった。
もしかすると、効力が切れて畑が荒らされているのかもしれない。
そう思った俺は薄い毛布を体から剥がし、寝間着のままフラフラと外へ出た。

「……くぁ」

まだ辺りは霧がかかっており、やはり畑の方が騒がしい。
まだ収穫期には早いので、畑がモンスターに荒らされる事は余りないのだが。
しかし、念の為俺は納屋からナイフを持ち出す事にした。
本当にモンスターが居るなら、ナイフではなくその隣に掛けてあるソードの方が良いのだろうが、俺にはそれはまだ重くて使いこなせない。
父は15歳の頃にソードデビューを果たしたと言っていたので俺も後3年はかかるのだろう。
父は平均より若干小柄だった為、俺も15になったからと言ってそれほどの成長が見込めないのが、とても悲しい。

そんな事を考えながら歩いていると、俺はいつの間にか自分の畑まで来ていた。
そこにはいつものように青々と茂ったマグモのつぼみや、しっかりと地面に根ざすヒットドレイクの茎があった。

「特に何もないみた……ん?」

俺は手に持ったナイフをくるくると遊ばせながら畑を見渡すと、何故か一か所だけ妙に鳥やら小動物が集まっている箇所を見つけた。
畑が騒がしかったのはどうやらアレが原因らしい。
俺は一応ナイフを構えながら、その場所へと近づくとそこには。

「人間だ」

人間が寝転んでいた。
顔はよく見えないが、多分少年だ。
それに、体の大きさからして俺と同じ年か、それよりも下か。
こんな森の中なのに、白い半そでの服に、下は黒の半ズボンという珍妙極まりない格好をしていた。
しかも背中には黒い四角い形をした入れモノを背負っている。
髪の毛は黒に近い茶色だ。

「うぅん」

俺がまじまじと横たわる少年を観察していると、うずくまるように寝ていた体がゴロンと寝返りを打った。
すると、それまで余り見えていなかった少年の顔がハッキリと見えた。
その顔に、俺は思わず「きれー」と呟くと、少年の周りに群がっていた鳥や虫を払いのけた。
奇妙で怪しいか怪しくないかと問われれば間違いなく怪しいのだが、とりあえず俺はこの同い年くらいの綺麗な少年の手を取ったのだった。



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