蛇行
3
「単刀直入に言うわ。楓、あなた学校を辞めなさい」
そう、淡々と述べる母の言葉を楓はどこか遠くの出来事のように聞いていた。
学校を辞める。
辞めると言うのはもちろん蔦谷学園を、と言う事だろう。
そして、辞めるのはもちろん自分だ。
楓は真っ白になった頭で少しずつ少しずつ理解すると、一気に気持ちが冷え込んでくるのを感じた。
「な、んで……?」
楓は掠れた声で、そう母親に問いかけると、母親は何故そのような疑問が出るのか分からないと言った風に眉を潜めた。
「楓、あなた、それ本気で言ってるのかしら?」
「…だって、俺、せっかく蔦谷学園でも頑張ろうって……せっかく学校にも慣れてきたのに」
「あんな学校で頑張ってあなたは何になりたいのかしら?」
母親は楓の言葉を一蹴すると、戸惑う楓の様子に深いため息をついた。
しかし、楓にとってはそんな母親の態度の方がどうにも受け入れ難いものとなっていた。
今までは、何の疑問もなくこの母親の言う通りに動いてきた。
だからこそ、今この目の前で楓を面倒そうに見る母親は、現在の楓の態度に不満があるのだろう。
あなたは私の言う事を聞いていればいいの。
その目は確かに楓にそう言っていた。
しかし、今の……一度家族から見放された楓には、その目はただひたすらに辛かった。
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