蛇行
2
「わかってると思うけど、私は今日も仕事でゆっくりしてられないの。早く要件を済ませたいから、さっさと座ってちょうだい」
「……はい」
言いながらため息をつく自分の母親に、楓はジクジクと己の気持ちが痛みにうずき出すのを感じずにはおれなかった。
それは、おととい、突然母親が自分に一度家に帰って来るようにと連絡をしたあの日からずっと楓の中を占めていた痛みだった。
そう、本日8月13日。
楓は突然母親によって家へと呼び出された。
しかし、お盆による帰省の誘いでない事は、電話口の母親の声で………いや、あの母親の性格からしてありえなと、最初から理解はしていた。
母親が自分を家へ呼び出す理由。
それは今となっては一つしかない。
そう、それは
「学校の事で、あなたに少し言いたい事があるのよ」
そう、学校の事。
蔦谷学園の事だ。
楓は見事に的中した自らの予感に、つ、と背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
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