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蛇行
6


頷くよしきに楓は深いため息をつくと、ズイとよしきの前へ顔を近づけた。


「な、なんだよ…別に受験生なんだから徹夜くらするだろ!?」

「だめ。夜はキチンと寝ないと」


楓は短く答えると、よしきの頭を軽く撫でてやった。

しかし、そんな楓の動向に、よしきは一瞬ムッとした表情を作ると、自らの頭の上に置かれた楓の手を、勢いよく払いのけた。


「っ、なんだよ!?ちょっと徹夜したくらいで……大袈裟なんだよ!アンタは!」

「大袈裟とかじゃない。よしき君、ちょっとおいで。少しでいいからキミは仮眠をとった方がいい」

楓は払いのけられた手で、よしきの手を掴むと、そのままよしきを部屋の中へと押し込んだ。


「ほら、1時間後にまた起こすから。だからよしき君はちょっと寝ておきな」


楓はよしきをベッドの前へ連れて行くと、そのままよしきをベッドへと座らせた。

しかし、よしきはキッと楓を睨み付けてるとベッドの脇に置いてあった参考書を拾い上げ、楓の元へと突き出す。


「大袈裟だって言ってんだろ!?いいから、あんたは黙って俺に勉強を教えてりゃいいんだよ!?雇われてる身分で、俺に指図すんな!」

「よしき君、落ち着いて。1時間だけだから。そしたら勉強しよう」

「うるさいっ!あんた!自分が来たばっかで休みたいからそんな事言ってんだろ!?バレバレなんだよ!心配する振りして考えが姑息過ぎ!給料分黙って働けよ!?」

「……よしき君」


明らかに普段のよしきよりも感情の高ぶりの激しいよしきに、楓はどうしたものかと小さく息をついた。

今のよしきは慢性的な寝不足により、感情のコントロールが上手くできていない。

予想するに……多分よしきは夏休みに入って、充分な睡眠をとっていないのだろう。

理由は……なんとなくだがわかる。

だとしたら、否が応でもよしきにはここでキチンとした睡眠をとって貰わなければならない。


叫んだせいか、肩で息をするよしきの目線に合わせて楓は膝をつくと、赤くなったよしきの目をジッと見つめた。


「じゃあ俺、この期間中のお給料いらない」

「……え?」


突然、楓の口から飛び出してきた言葉によしきがポカンとした表情を浮かべると、楓はにこりとよしきに向かって笑顔を浮かべた。


「ね。だから、よしき君……ちゃんと寝よう?」


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あきゅろす。
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