蛇行 4 「ったく、どんだけタラタラ歩いて来たわけ?遅いっての全く」 「……す、すみません」 再び怒鳴られました。 楓は玄関先で仁王立ちをして待ち構えていたよしきに、玄関を開けて早々に怒鳴られた。 これでも急げと電話口で言われたよしきの言葉に従い、楓はこの炎天下の中、3日分の荷物を抱え、必死で走って来たのだ。 これはあんまりだ、 そう思いながらも反射的に謝ってしまう自分に、楓はどうにも自分に溜め息が出るのを抑えられなかった。 「ほら、そんな所に突っ立ってないで、さっさと上がる!早速部屋着いたら始めるからね」 「えっと……何を始めるのか聞いていいかな?」 「はぁ?!あんた何言ってんの!?夏休みってーのは受験生にとっちゃ天王山なんだよ!?勉強以外何をするっての!?」 「……えーっと……俺はもしかして……3日間泊まりがけで勉強にお付き合いするって事かな?」 「当たり前だろ!?あーもう!本当にめんどくさい!!」 「え、えぇ!?」 楓は全く聞いていなかった現状にオロオロしていると、それに苛立ったよしきに思い切り腕を引っ張られた。 「ほら!この一分一秒が俺の学力アップに繋がるんだからさっさと来て!」 「ちょっ……!わかった!わかったから!」 半ばズルズルと引っ張られながら、楓は自分と同じくらいの身長のよしきの背中を見つめた。 何だかわからないが、凄い気合いの入りようだ。 しかし、 しかしだ。 楓はよしきの背中を見つめながら、一つだけ気になる事があった。 夏休み、 受験勉強、 それはわかるのだが……確かよしきは今は 「(塾のお盆強化合宿じゃなかったっけ……?)」 そう。 よしきは本来ならば塾の合宿に参加している筈だ。 去年楓も参加した、あの合宿に。 なのによしきは今ここに居て、楓の手を引っ張っている。 「(…………なんで?)」 楓は頭上に疑問符を浮かべながら、足早によしき宅の階段を上ると、いつも二人が勉強する、 よしきの部屋の前へとたどり着いていた。 [*前へ][次へ#] |