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Side光樹


一歩、また一歩と近付いてくる母さんに思わずポケットに入れてあった発信機を押してしまった。

発信機は兄貴の携帯と繋がっていて、今まで何度も助けられたが、今回ほど恨めしく思ったことはない。
兄貴のことだ、あと10分もあればここに来てしまう。


頭を抱え、呻いていると、母さんが俺を見ていることに気付いた。

そして…



「あの、光樹君?」



母さんと、同じ呼び方

母さんと、お な じ 呼び方!!

声も、母さんと同じぐらい高い!!
もう、この人が母さんじゃなくても、俺が母さんだと言ったら母さんだ!!



「母さん!!」



俺はもう迷い無く抱き着いた。いつも、兄貴が独り占めしてたから、俺は指をくわえてみているだけだったから!!



「えぇ!?」



何か驚いているみたいだけど、気にせずぎゅうぎゅうと抱きしめる。
ああ、暖かい。しかも、なんだかいい匂いがする……


そのまま、抱きしめて居たかったけど、扉が開きそれも叶わなかった。



「光樹!どうし、た………母さん!?」



現れたのは、兄貴。反応も、予想通りだ。マザコンだった俺より、重度のマザコンだった兄貴。



「光樹!母さんを離せ!」
「ヤダ!いつも兄貴ばっかり抱きついてたじゃん!」



母さんと俺を引きはがそうと腕を伸ばしてくる兄貴を払いのける。ふと、母さんが気を失っていることに気付いた。

そちらに目を奪われていると、兄貴に母さんをとられてしまった。

そうだった!!
俺と兄貴、めっちゃくちゃ仲が悪かったのを思い出した!!



「光樹、行くぞ」



母さんを横抱きにして歩く兄貴を睨みながら後を着いていく。


母さんが起きたら、まず名前を聞こう…そう、考えながら。





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あきゅろす。
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