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Serial novel ※オリジ
ウサギノ計画〜第四章〜
「アリスさんこそ僕らが嫌いなのですか?」

「えっ?」

(私がみんなを嫌ってる?)

悲しそうな顔のままトカゲは頭を横に振った。

「もうこんな事を話しても拉致が明きませんね…。ごめんなさいアリスさん」

トカゲはアリス目掛けて釘を飛ばした。

「ぁっ!」

もはやそれはダーツの矢。

アリスは避けるのでいっぱいいっぱいだ。

ビッビッ

エプロンが少しだけ破ける。

トカゲは動き回るアリスに暫く手こずっていた。

「痛ッ!」

釘がアリスの腕を掠った。

じわりと血が滲む。

少しだけ、アリスの動きが鈍くなる。

ガッガッガッ

「!」

いつの間にかアリスは追い詰められていた。

アリスは背後の木に3本の釘で留められている。

釘は深くまで刺さっている。

身動きがとれない。

トカゲがゆっくりと近づいてくる。

「アリスさん、これでサヨナラです…」

「い…嫌…」

トカゲがトンカチを振り上げる。

アリスは右手にある包丁を見た。

包丁の刃がアリスを写す。

「!」
















赤くなる自分の幻。
















ゴトッ

アリスに傷は無い。

しかしアリスは赤くなっていた。

「え…?」

(何の…赤?)

赤はトカゲの赤だった。

手首がぱっくりと切れている。

そこから溢れるように赤が流れている。

「血…」

トカゲの血。

さっきのゴトッという音はトンカチを落とした音だった。

「アリ、ス…さん」

トカゲの呼ぶ声でアリスはハッとした。

(私がトカゲを怪我させたの?)

指先が震える。

さあっと血の気が引いていく。

「うぐっ…」

裂けた手首からは出血が止まらない。

「と…トカ…」

目尻に涙が浮かぶ。

(どうしよう…どうしよう…わ、私っ…)

頭を抱えて動揺するアリスは、トカゲがニヤリと笑った事に気づかなかった。

トカゲがトンカチを無傷の方の手で拾う。

そして再びトンカチを振り上げる。

そこでアリスがトカゲに気づいた。

「嫌ぁぁぁぁああッッ!!」


ブシュゥゥッ


そんな音が耳元でして血が吹き出した。

「あ゛っ…がッ…!」

うめき声。

バタバタと土に、草に、トカゲに、アリスに血が飛び散って赤くする。

ドサッ

トカゲが倒れた。















「え…」

赤い水溜まりが広がっていく。

アリスはトカゲの喉を切り裂いたのだ。

包丁の銀色から赤に染まった刃がそう示した。

「ぁ…ト、トカ…」

アリスは更にひどく混乱している。

鉄臭い血の臭いにあてられて頭がクラクラする。

スルリと包丁がアリスの手から滑り落ちた。

つられて釘もポロッと外れて落ちた。

あんなに深く突き刺さっていたのが嘘のように。

体に自由が戻った。

直ぐにトカゲに近寄ろうとした。

しかし吐き気がして、口を手で覆う。

「うっ…!」

バタバタバタッ

耐えきれなくなって吐いた。

自然と涙が頬を伝う。

「ハァ、ハァ…ッ」

殺した。

殺してしまった。

トカゲが目の前で倒れている。

「ト、トカゲ…トカゲ!しっ死なないでよ…」

トカゲは何も答えない。

トカゲの体に触れる。

生温かい。

「何か言ってよ…?」

血溜まりを広げるだけ。

「や…嫌だっ、トカゲ!トカゲッ!!」

アリスは何度もトカゲの死体を揺らした。
















「…」

アリスはトカゲが死んでしまった現実を受け入れた。

アリスは座り込んだままで、トカゲの死体を見つめた。

「ごめんなさい…」

アリス自身でさえ聞こえないほど小さく呟く。

その後、逃げるようにその場から去っていった。


〜続〜

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