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Serial novel ※オリジ
Sixth road 1-『六番通り』-
Sixth road 1-『六番通り』-

ショッピングセンターを出た私達は『六番通り』を目指して歩いていた。
ショッピングセンターはそりゃあもう広いったらない。
いつまでも建物が視界から消えない。
皐月「本当広いね」
ヒズミ「ここは『道の国』の中でも1番の名所で、多分唯一のデートスポットかな?」
皐月「ふーん・・・」
『道の国』にもデートスポットなるものがあるとはね。
ま、唯一っていう点が納得させる。
気が付けば、ショッピングセンターの建物の影は視界から消えていた。
ヒズミ「もうすぐ『六番通り』になるよ」

『六番通り』は近未来的な造りになっている。
家や店の造りがこれまでとは大きく違っている。
皐月「一つの通りだけでこんなに雰囲気違っていいのかな・・・」
ヒズミ「いいんだよ。ここがそうしてるんだから」
皐月「それは・・・まぁ住人達の自由よね」
近未来的、とは言っても道は相変わらず同じだけど。
歩いていくと、前から男の子と女の子が来た。
道の上で人に会うのは初めてだ。
少年「ロード様?」
男の子が私に気付いた。
皐月「・・・そう、だと思うよ」
やっぱり自分がロードです、とは言えない。
少女「あ、ヒズミ君もいる」
女の子が佐々川君を見て言う。
この子、何で佐々川君の事知ってるの?
皐月「・・・あ、そっか。佐々川君、前にここに来た事あるんだっけ」
ヒズミ「あぁ、うん」
女の子が佐々川君に近付いてきた。
少女「ねぇヒズミ君。私達の事、覚えてる?」
ヒズミ「うん。南瑠(なる)ちゃんと皇(こう)君でしょ?」
皇「覚えてたんだ」
にっこり笑って佐々川君は頷く。
南留「その笑顔・・・皇より素敵でかっこいい」
皇「なっ、南留!?俺という男がいながらっ!!」
南留「・・・ふふっ冗談よ。ジョーダン!」
皇「な、なんだ・・・」
安堵のため息をつく皇。
この2人、恋人同士なんだ・・・。
皐月「2人はいくつなの?」
見た感じ、私とあまり変わらないと思う。
皇君の方は私よりも大きいし。
あ、南留ちゃんも・・・。
ほんの2、3cmだけど・・・。
あぁ・・・身長が欲しい。
南留「14です」
皐月「じゅっ・・・14!?」
以外にも2つ下だった。
皐月「せ、青春してる〜!いいなぁ」
ヒズミ「・・・」
皐月「・・・どうしたの?」
佐々川君の表情が曇った気がした。
ヒズミ「何でもないよ」
気のせいか・・・?
皇「そうだ南留。せっかくロード様に合ったんだ。何か見せ・・・」
言いながら皇が走り出した時。
女性「きゃ…!」

ズルッ・・・ドサッ

南留「皇!?」
女性とぶつかり、皇が転んでしまった。
皐月「わ、すいません!」
私も近寄ろうとした時、皇から何かが出てきた。
皐月「!?」
それは薄ピンク色をした丸い光。
少し皇の周りを飛んだ後、どこかに行ってしまった。
気付けば、女性の姿も無い。
皐月「あ」
ヒズミ「どうかした?」
皐月「今、皇く・・・」
あの光の事を言おうとしたが、それは南留の大声によって止められた。
南留「大変!皇の様子がおかしい・・・」
皐月「え?」
確かに、その顔はボーっとしている。
何かが抜けたみたいに。
皇「・・・南留?」
南留「皇!!良かった、何もなってないのね?」
南留は嬉しそうに皇に抱きついた。
皇「・・・抱きつかないでくれる?」
皇は南留を体から離した。
顔が嫌がっている。
南留「えっ?」
面倒くさそうな表情で皇は南留にこう言った。

皇「俺、南留の事そういう風に見てないし」

その場に沈黙と静寂が訪れた。
動けないような重い空気。
それを破ったのは南留だった。
南留「こっ・・・皇・・・どう、したの?」
言葉がつっかえる。
皇「どうもしてないけど?」
皐月「なっ」
明らかにさっきとは態度が違う。
ヒズミ「うーん・・・これは厄介だよ」
皐月「厄介って何が?」
ヒズミ「皇君は『南留ちゃんへの愛情』を無くしたみたい」
皐月「さっき転んだ拍子に?」
ヒズミ「うん」
それを聞いた南留がショックを受けてしまった。
それにしても、【無くしたモノ】にも色々あるな・・・。
ヒズミ「『感情』の【無くしたモノ】はそれ自身が移動するんだよ」
移動するって・・・。
ヒズミ「だから探すのが大変で」
まさか・・・。
皐月「ねぇ佐々川君」
ヒズミ「何?」
あの光の事!?
皐月「私、多分それ見たかも。向こうに飛んでいってた」
ヒズミ「参ったな・・・。遠くに行く前に追いかけよう」
皐月「南留ちゃんは、どうする?」
暗い表情の南留ちゃんが首を横に振った。
南留「私には見えないんで・・・何も、出来ません」
皐月「そんな事な・・・」
南留「皇に嫌われちゃったのに・・・!?」
俯いていた南留と目が合う。
南留は目尻に涙を浮かべている。
私は光が行った方を向く。
皐月「嫌われた、ね。じゃあ探すの止めた。南留ちゃんはそれでいいんだよね」
ヒズミ「え!?」
まだ南留は私を見ている気がした。
皐月「行こう、佐々川君」
ヒズミ「さ、皐月・・・?」
そのまま歩き出す。
南留「・・・っ、待ってください!」
ピタッと歩くのを止める。
ゆっくりと振り返る。
南留「お願いです!皇の【無くしたモノ】を探してください!」
南留の頬を赤い涙が伝った。
私は微笑む。
皐月「うん」
良かった。
南留ちゃんが諦めなくって。
私は佐々川君と走って行った。

Sixth road 1-END-

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