小説2
遺書(死ネタ・J視点)
馬鹿です。
お前は本当に。
冷たくなった彼の亡骸を目の前にして、呟く。
捕らえられた後、グランコクマで真面目に働いていたように見えていた矢先の、訃報。
遺された遺書らしきモノを見て、其処に記された「貴方」が自分である事もすぐに理解った。
彼の死顔は安らかで外傷も無い。
医師の話では、徐々に生きる機能を低下させる、法的にはまだ認められていない生物を「安楽死」させる薬を自ら投与したとの事だった。
私は遺書を再び読み返す。
やはりおまえは馬鹿です。
思いながら、何故か震えが止まらない。
私を愛していたと?
ならば何故死を選んだのですか。
あれほど私の事だけを考えるように云ったのに。
その結果が此れですか。
もう動かない其の唇にそっと触れる。
もう言葉を紡がない、私に憎まれ口を叩く事ももう無い、其れはとても冷たい。
其の時初めて私は気付いた。
彼の気持ちを。
僅かな可能性を信じて、先生を蘇らせようと全てを捨てた彼の思い。
ああ、そうだったのか。
此の気持ちが。
私は失って初めて気が付いた。
もう遅過ぎるけれど。
それでも私は、もう一度瞳を開けて、憎まれ口を叩く彼にもう一度会いたいと切に願った。
理論上は、オリジナルの記憶を残したレプリカの製造も可能。
其れを識っていた私は、禁忌とされた研究を続ける事を決意した。
だからもう一度、やり直しましょう?
終
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