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I believe that I can meet again!
虚ろな目付き。
元就は一人歩く。

仕事帰り、一日の疲れと 心にあく風穴を抱え街路を歩く。
方脇には街灯が立ち並び向こうには道路が通っている。
行き交う車は引切り無しで、信号の切り替わりのたびに長蛇に連なり滞る。

方脇には高層ビルが連なり、明かりを漏らす。否、街路を煌々と照らす。
人通りは、ひと一人真っ直ぐ進むには申し分ない程度。
疎らと言っても過言ではない。

(夜でも明るい世の中になりおった。今生の世では日輪のお力なく光が灯る…)

そんな街中の街路を元就は歩く。
自宅に向かって。

元就は道中、一人想いに馳せる。

前世で愛した愛しい男に。


(元親………)

珍しく転生した先で前世の記憶を寸分たがわぬ姿で脳内に留めている元就。
前世で生まれ、自我を確立させたときから………死にいたる迄。全て。
………死に際の記憶は最も鮮明に残っている。

戦に破れ地に伏す自分。

少しばかり遅かった助けに駆けつけた元親の腕の中で虫の息を紡ぐ自分。

最期に伝えようとした言葉も上手く紡がれず空気を送り出すばかりで。

ただただ消え逝く自我の端で切に願った


この男に廻り逢いたい。
ただ逢えるだけで良い。
それだけで良いから………


最期に想えたのがこの男で良かった。そう胸で呟き静かに息を引取った。


最期の時に必死に願った一つだけの願いも
未だ今生で叶えられる事は無く、一人での生涯に徹している。


思考を閉ざし空を見上げると暗雲が立ち込める。まるで自分の心理を見透かすが如く。
視線を正面に向け歩く速さを速める。

(この交差点を渡ればすぐ家に着く…)

そう考え足を速める。
交差点に差し掛かり、白と黒の線の並ぶ道を歩く。
半ばまで差し掛かり、ふと空を見上げる。
何故だか分からないけれど…歩く足を止め、首を仰ぐようにして。



丁度振り出した雨。

暗雲を背景に背負い自分に向かうが如くおつる雨粒。

「あ……………」

時間の経ち方がとてつもなく遅くなる。
自分に向かいおつる雨は動いているからして一つ一つの線状になって見える。

「これ……は………」




あのときと 一緒だ。





前世の最期。敵軍の弓兵全てに放たれた矢が自分に向かい落ちる 降る。

今自分に向かい落ちる線状に見える雨粒がそれと重なり

思考が止まる。

「あ……や、だ……」

動こうとする脚は膝の笑いが止まらず使えない。


「あ………」



信号が停止から進行へ移り変わる。

此処は交差点の中心であった。


そう思った時にはもう遅かった。



鳴り響くクラクション。響き渡る各々の悲鳴、叫び声。

全て遠くで聞こえ動けない自分の足に歯噛みする。

迫る車体。眼前を埋め尽くす車の発する明かり。

とっさに目をつぶり、次の瞬間には受けるであろう衝撃に身構える。




「もとなりーーーーーーーーーーーッ!」




ドカッという音が聞こえたと思うとと共に
何かに包まれ宙に浮くような感覚に苛まれた。

必死に瞑っていた目を開くと眼前に広がる信じられない景色。




「もと……ちか……?」
「いってぇー……元就?やっぱ元就だよなぁ?うわ、かわんねぇ!」


前の生で
最後に見たのと
寸分たがわぬ笑顔

視界いっぱいに広がる。


「もとちか………元親ぁ…ッ」
「うおっ?元就?」
「やっと…やっ、と…」
「あぁ、やっと逢えた……ずっと探してた。ずっと好きでいる。愛してるぜ元就」

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