T:D=9:1
「俺、元就のこと好きだぜ。」
後ろから抱かれているため、
身長の差で真上から降ってきた言葉に驚きの表情を隠せずにさらけ出す。
「好き…だと…?」
かろうじて口をついて出たのは再確認するためのものでしかなくて、我ながら情けなく思った。
「あぁ、好きだ。お前以上に好きになれる奴なんていそうにねぇよ。」
なんとこっ恥ずかしいことを紡ぐ口なのだろう。
呆れと照れの念をこめて、やつの口元を見つめていたらなにを勘違ったのか奴は
自分の唇を我の唇に引きよせ、口付けた。
触れるだけのそれは我に愛を伝えるためだけのそれであって
なんだかこの阿呆面をした男を愛しいと不覚にも感じた。
あまりにも口を聞かぬ我に勘違った罪悪感を覚えたのか、
「わり、嫌だったよな」と柄にもなく小さくなって言うものだから、
「別に…」とだけ小さく答えた。
素直になる方法など我は知らぬ。
でも、どうかこの顔から耳にかけての火照りに気づいてほしいと、小さく願った。
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