[携帯モード] [URL送信]
2
頭を定位置に戻すと小さな半兵衛はこれまた小さな口を開いて

「けいじくん、それはなんだい?おおきな おとを はっしながら ひかっていて、こわかったよ」

小さな半兵衛はあごと目線を俺の手元に向けて言った。

「へ?あ、それ?って、え、これ?」

半兵衛の目線の先に自分の目線をかち合わせると、どうやら携帯を指しているらしい。
携帯を持った右手を少し上にあげる。と、半兵衛は小さくびくついた。

「もしかして、怖いのか?」

可愛い、可愛い、可愛い!
緩む頬を引き止められぬままに、問うた。
すると白い頬を薄桃色に染めて、正面に掲げられた携帯を避けるように動き、
俺の左側にくっついてきた。

うおおおおおおおおおおおおおおおおッ
これはッ!可愛すぎるだろう!

言葉に表しきれない愛しさが込み上げると同時に、
サディスティックな俺も覚醒した。

「半兵衛?これが動き出したの?それで怖かったんだ?」

さっきから緩みっぱなしな頬をそのままに、携帯を半兵衛の方に近づけてみる。
半兵衛はさっきより大きく肩を跳ねさせて、必死に請う。

「それだよっ!だからもう、こっちに ちかづけないでよ けいじくん!」

俺にしがみつく腕は簡単に折れてしまいそうなほど細い。
そんな細い腕のどこから出てくるんだと言うほど、強い力で俺の左腕にしがみつく。

いつもの半兵衛より明らかに1オクターブぐらい高い声。
元の声だって男にしては高い声だと思う。それより1オクターブだから、もう女の子みたいだ。

いろいろと思考をめぐらせていたら、なんとなく気づいた。


なんで俺、こんなに冷静なんだよ。


……昨日、賞味期限を2日程度過ぎた牛乳を飲んだからか。そうに違いない。
いやいや、それは腹痛の原因にしかならんだろう!
てか、この半兵衛可愛いなぁ・…

……やべぇ!なんかこうむらむらっときてる気がする!
いやいやいや、こんな幼子にそりゃねぇよ!
つかそもそもなんでこんな幼くなってんの!?
はっ!半兵衛って伸縮自在だったのか!?


内心で頭を抱えながら大暴れ。

何もしてこない俺を不安に思ったのか。はたまた、内心が外に露見していたのだろうか。
小さな半兵衛は携帯を警戒しながらも、不安そうな目で俺を見ている。

「け、いじくん?だいじょうぶ…?」

心配そうに問い掛けてくる。
あぁ、やっぱり可愛い声だなぁ・・・
答えようと思い口を開こうとしたら、頭痛と共に突然目の前が歪んだ。

「ねぇ、けいじくんってば・…だいじょうぶ…?」

問い掛けてくる小さな半兵衛の可愛い声色までもが歪む。

かえるのうたでよく使われる、
……輪唱、っつぅんだっけ、か?

可愛い声色が何重にもなって聞こえてくる。


……あれ、いつもの半兵衛の声…?

オク違いの愛しい声色が2つ。混ざって溶けて幾重にも重なり響く。
体がふわっと浮かぶような錯覚に陥った。

「ッつ!いてぇ!」

足にするどい痛みが走る。




「…じくん。…いじくんってば。……慶次くん!」
「うわぁっ!」

半ば怒鳴られるようにして名前を呼ばれ、意識が覚醒する。

next

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!