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空色に染めて


「俺は何だと思う?」

二人肩を並べ、窓辺でまどろんでいたら、
ふいに、愛しい人に問われた。

……突拍子も無さ過ぎる。まぁ、時たま見せるこの突拍子の無さと言うか、子供っぽいところが彼の魅力の一つでもあるのだけれど。

「何…とは?」
「んー…俺って空だよな」

彼はうんうんと一人自分に相槌を打つ。
空…。空と言ったらこの窓から見える果てしなく広がるこの青(最も、そろそろ赤みがかってきている)の事だろうか。
というかそれしかない。

(何時にもまして奇怪なお話ですな)

思わず苦笑を漏らした。

「何故そう思われるのですか?」

くつくつと笑いを含んだ口調で問うと、流石にこんなことを事細かに話すのも気恥ずかしいのか
視線を真っ直ぐ某で無く空にむけて、ぽつりぽつりとつぶやいた。

「まぁ、第一に俺の色が蒼ってのも、ある」
「第一、とは、他にも理由が?」

その理由しか頭に浮かんで居なかった。他に彼と広がる青との共通点などあっただろうか。

ふいに彼は空に向けていた目線を此方に向ける。
心なしか頬が紅く染まっているように感じるのは気のせいであろうか。

「あー…、ぜってぇ、笑うなよ?」
「はぁ…、約束するでござる」

彼は視線を右往左往させながらもごもごと言う。何だろう、何を申すと言うのだ?
約束すると告げなければ、きっと続きは望めない。だから思わず約束する、と約束してしまった。

「Ah…、空、ってさ…赤く染まる、だろ?」
「はぁ…」
「だから…、夕方の空見てると思うんだよ。俺って空だなぁ、とか」

視線は空に向けられつつ右往左往。
きっとこれ以上口を開くのは嫌だろうけど、残念ながら某には、そんな少ない情報で話を成立させられる脳は備わって居ない。
聞き返したら怒るだろうか?
でも聞き返さねばむずむずとするこの感覚が消えない。

「…と、いうと……?」
「……っ!」

恐る恐る問い掛けると、彼は目を見開いて此方を見た。嗚呼、やはり頬が紅い。何と申しておるのだ。
政宗様が、こうなってまで紡ぐ言葉は、きっときっと嬉しい事。

莫迦ですみませぬ、としょんぼりした雰囲気を一心に醸し出すと、政宗殿はため息を一つ吐いて、
だから…!と、口を開いた。

「、だから…っ!、要するに、俺も、お前の紅色染まってるだろ?それが一緒だ、とか、思って…みたり…」
「………ッ!」

尻すぼみに小さくなる言葉に、某の身体はわなわなと震える。
嗚呼…、嗚呼、なんと可愛らしいお方なのだ伊達政宗…!

きっとこの物言いから察するに、赤くなっていく空を一人眺めながら、今までの思い出にでも浸っていたのではなかろうか。
そんな記憶の中の自分と空を重ねて、一人赤面でもしていたのではなかろうか…!

「嗚呼、なんと愛おしいのでしょう…!」
「おい、離せよ…っ」

体が動くままに愛しい愛しい彼を正面から抱き締めると、腕の中でささやかな抵抗を見せる。
無意味に近いようなそんな抵抗ですら愛しいと思うなんて。某はどうかしているのでしょうか。

「政宗殿が愛しいのが悪いでござる」
「HA、意味わかんねぇ…」

憎まれ口を叩きつつ、某の頬に触れる耳を赤らめているなんて。どこまで某を夢中にする気なのだ。


「嗚呼、其れを言うなら某も、」
「Ah?」
「某も空でござる」
「ほう…?」


気付けば空の赤も、もうそろそろ引き、夜の空の色、濃紺に変わってきている。
その様子を目を細めて眺める。きっと窓に背を向ける格好で某に抱きすくめられている彼は気付いていないのだろう。




















De rouge vif au bleu froid.
「……紅も、蒼に、染まりきっているでござる」
「HA!…………嬉しいこと、言ってくれんじゃねぇか


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De rouge vif au bleu froid.
ドゥ ルージュ ヴィフ オ ブルー フロア
鮮 朱 か ら 冷 蒼 へ

by Sound Horizon"檻の中の花"



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