君への
けれどそんなことをすれば、彼は僕を死ぬまで離さないだろう。
(そんなこと赦されないんだよ慶次くん。)
そう思ったらふいに目頭がじわりと湿って、目の奥がツンとする。
「…っ、ふ、ぁ…、け、いじくん…、っ」
彼に声が聞こえないよう、布団に潜り込んで、声を殺して泣いた。
拭っても拭っても涙は止めどなく溢れてくる。
起きてほしくないのに起きてほしい
その矛盾にすら胸をしめつけられた。
「…ふ、ぅ…ッ、げほっ、…かは…、っ」
ふいに喉咽が詰まって、咳が出た。
一度始まるとなかなか止まらないそれは暫く続いて。
(あぁ、これじゃ彼が起きてしまう)
だから僕はそーっと、そーっと、彼の腕の中からすりぬけた。
(…最後に一つだけ我が侭を、)
神に請うように胸中で呟いて、そっと枕に片手をついて彼の顔を手探りで探す。
指先に触れたぬくもりに手を這わすと、丁度そこは頬だった。
指先で彼の柔らかい唇を探しだし、
自分のそれを近づけて、くっつけた。
I hope we can get together next life !
「僕は君を愛しているよ。…またいつか逢おうね、慶次くん。」
頬を伝う水と、垂れ下がる眉に気づきながらも、それでも笑顔で言って。僕は手探りで部屋から抜け出した。
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