愛する
朝起きたら、目が見えなくなっていた。
(……ついに僕も終わるのか…)
直感的に感じ取った。これは体からの敗退宣言なのだと。
(今僕は慶次くんの腕のなかに居たんだった)
目に見えないけれど、温もりや寝息に、自分の状況を把握する。
嗚呼、これはまずい、ととっさに思った。
彼の腕の中で逝くなんて僕には許されていない。
僕は今まで"そうやって逝きたかったろう人たち"を自らの手で殺めてきたのだから。
目には見えないけれど、きっと彼はまだ幸せそうな顔をして寝ているのだと思う。
脱け出すなら今しかない。
体に回された腕の中で、もぞもぞと動いて、腕を布団の上に出す。
「けいじくん……」
彼が絶対起きてしまわないように、小さく、小さく、呟いた。
しんとした室内に自分の声だけが響いて消える。
(出来ることなら君を起こしてしまいたい…)
もう僕は生きていられないんだ。
君ともう一緒にいてやれないの。
だから……
僕を最期に思いっきり抱き締めて!
体が軋むまで!骨が悲鳴をあげるまで!
(そう、言ってしまいたいよ……)
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