まりもちーず
I'm hungry 3
5分もしないうちにサニー号の甲板には巨大な魚が二匹横たわっていた。
「すげー!」
「なんだー肉じゃねーのか」
「オイオイオイ…なんじゃーこのバケモノみてぇな魚は…」
みなそれぞれにいろいろ言っているなかキッチンからサンジが包丁を持って出てきた。
大きすぎてキッチンには入らないため、ここで捌くのだ。
「どけマリモ」
乱暴にゾロをどかすとサンジは見事な手捌きで魚を解体していった。
その間もサンジは終始無言
「オイ」
「…」
「食料が底つきそうなんだって?」
「……あぁ。」
「これで少しはもつか。」
「さぁな。」
ゾロの問いかけにも必要最低限でしか応えないサンジにウソップが声をかけた。
「おいおいサンジ、せっかくゾロがとってきてくれたんだぞ?ありがとうくらい言えよなー」
「ウソップ、これ捌いたやつからキッチンに運ぶの手伝ってくれ。今日はお前のすきな照り焼きにすっぞ」
「ホントか!?手伝う!」
ウソップは嬉々として捌いた魚をキッチンに持って行った
一人静かにさばき続けるサンジにゾロは再び声をかけた。
「もう一匹はお前用のな。」
「はぁ?こんなバカデケぇのルフィじゃあるめぇし、食える訳ねーだろ。」
「…ここんところお前ほとんど何も食ってねぇだろ」
「…!は?一流のコックが味見もせずにメシを出すかよ。それに一緒に食卓にもついただろ?」
魚をさばく手を止め、腕を組んでこちらを真っ直ぐに見つめるゾロを睨み返した。
「味見はしても、食卓では全く食べてねぇ。ずっとお前はやれ茶だお代わりだっつってろくに席にもついてやしねぇ」
「……。いつから気付いてた」
「4日くらい前。」
サンジはゾロをことさら強く睨みつけた。
しばらく睨み合いが続いたあと痺れを切らしたゾロがサンジの腕を掴んだ。
『うわ…もともと細ぇけど、さらに細くなってやがる…』
「んだよ…」
腕を掴んだまま何も言わないゾロにサンジは顔を少し赤らめた。
その表情に堪らなくなったゾロはサンジを担ぎあげ、ものが少なくて寂しくなった食料庫に連れていった。
「おい!なにすんだよ!まださばきかけ…」
文句を言い続けるサンジの唇をゾロは塞いだ。
唇を食むようにしてからゆっくりと舌を絡め、
ちゅ…と音をたてて唇を離した。
その音でさえ恥ずかしいのかサンジは目元まで真っ赤にした。
「なんのマネだ」
先程よりかは言葉に勢いの無くなったサンジにゾロは静かに、そして真剣に語りかけた。
「お前は生意気につっかかってこい。メシ食わねぇせいでそれができねぇんならいくらでもオレがさっきみたいに魚でも海獣でもとってきてやる」
座ったまま抱きしめられて少し体勢が苦しかったが、サンジは暖かいゾロの体温がなんだか嬉しくて抱きしめ返した。
気が付くとサンジの目から涙がこぼれていた。
「お、おい。なんで泣いてんだよ」
ゾロはそれまでのスマートさとは打って変わってオロオロし始めた。
「だって…だって俺はこの船のコックなのに食料の管理もできねぇで皆にひもじい思いさせちまった…グスッ…お前の好きな酒も無くなっちまったしその上お前に同情されて食料調達してもらうとか悔しくてしょうがねぇんだよ!このマリモ野郎!あーもう!腹へった!メシ作る!」
何故か途中からキレ気味になったサンジにゾロは吹き出した。
「今度はなんだよ…」
「いや、やっぱそーゆーお前じゃねぇと張り合いなくてつまんねーよ」
「見てろよ!これからはしばらくケンカもしなかったぶん暴れてやっからな!」
すっかり生気の戻った瞳と泣いた名残でまだ赤い鼻を見てゾロはつぶやいた。
「可愛いなお前。」
「!!///」
さて心配された食料難だが、
明朝、島につき、無事に解決され、ゾロの活躍はなかったとか。
おわり
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