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友情の形2

「単刀直入に言うけど、僕は君に生徒会に戻ってほしいと思ってる」

近くの椅子を引いて悠々と脚を組んで座った慎一が切り出した。

「悪いけど、生徒会はもういいよ。俺には向いてなかった」

或人は慎一と離れた場所に座って、自嘲するように答えた。
慎一は歪な笑顔を浮かべる。

「アルが生徒会に入りたくないのは靖幸が原因かな?それとも菖蒲未鷺?」
「別に、俺自体の問題だよ」

或人は動揺を悟られないため、慎一と同じ表情を作って首を傾げた。
慎一は或人の言葉を聞いていないかのように続ける。

「二年前の中等部での学祭からだよね。アルが僕らから離れて地味になろうとし始めたのは」
「別に」
「あれだけ『好き』とか『結婚しよう』とか言ってたのに、菖蒲に近付きもしなくなったよね。靖幸には怯えてたみたいに見えたよ」
「やめろよ」
「菖蒲にフラれて靖幸にからかわれたんだと思ってたけど違うかな?」
「……違う。菖蒲さんも靖幸も関係ないよ。とにかく生徒会には戻らないから」

或人がきっぱりと断ると、慎一は脚を組み替えながら、眉間に指を置きため息を吐く。

「仕方ないな。それなら交換条件にしよう」
「交換条件?」
「僕のうちは製薬会社や病院をやってるから面白い薬の都合がつくんだよ。君が生徒会に戻るなら分けてあげよう。それを使えばあの堅物の菖蒲未鷺だって好きなように弄べ――」

がたん、と或人に蹴り飛ばされた机が床に倒れた。
或人は完全に目の色を変えていた。

「黙れよ。菖蒲さんのこと、軽々しく口に出すな」
「まったく。君の菖蒲未鷺好きは変わらないんだね」

落ち着いた様子で慎一は再度ため息を吐く。

「僕は二年前に君が靖幸に何をされたのかは知らないけど、君がどれだけ菖蒲を好きかは良く知っていたつもりだよ」
「……何が言いたいんだよ」
「僕は今みたいに影でこそこそ菖蒲を守る君より、菖蒲にくっついてまわる馬鹿犬みたいな君が良かった」

或人は慎一を殴ろうと固く握っていた拳を緩め、俯いた。

「早くその陰気な顔をどうにかして、生徒会に帰って来なよ」

王子と呼ばれるのに相応しい優雅な仕種で立ち上がった慎一は一人で隊室を出て行った。

残された或人は一歩も動くことが出来ずに佇んでいた。

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