7 子供の頃はいつも一人で、海で泣いてた。 いつの間にか傍にやって来た少女が、 手を握って並んで座ってくれる様になって、涙を流す事はなくなった。 だけど俺の前から少女が消えて、また独りぼっちになった。 もう一人で泣くのは嫌だったから、欺瞞と虚勢で気持ちを誤魔化した。 カチカチにしたガードは俺を余計独りにしても、 どうする事も出来なかったから。 ウンザリする毎日に叫び出しそうになってた俺に、またお前が現れた。 怖かったんだ。 また、お前がいなくなるのが。 「……瑛くんも悪いんだよ?」 寂しい事言うからと言う奈子が、 俺の頬にハンカチを当てた。 変わった俺と、 変わらないお前。 「……ごめん。」 頬に当たった奈子の手を両手で握って謝った。 ……一緒に座った海辺の夕焼けはあの頃と全く変わってないから。 溶かした涙と一緒に、俺の欺瞞も強がりも。 全部一緒に消えればいいと思った。 End. [戻る] [TOPへ] [*前へ] |