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あべくんでも、ってなんだよと思いつつ、阿部はうなずいた。ってか、こいつ俺をなんだと思ってんだ。俺は迷いがないわけじゃねーぞ、試合中も悩んだらタイムかけて内野と話し合うだろうが。少し気分を悪くしながら、阿部は心の中で、なぜ三橋がそんなことを言ったのか考えた。
俺は、迷いがないだろうか。いや、そんなことない。どっちかっていうと、迷ってばかりだと思う。試合でも勉強でも進路でも、迷ってばかりだ。
そして最大迷うのは、目の前のこいつに関する事だろう、と思う。
好きだ、と思う。それは間違いない。その思いのまま、手に入れてしまった相手。
だけど、それでよかったのか、未だに答えはない。それこそ、迷い続けるのではないだろうか。
これからもずっと。