[通常モード] [URL送信]

SS
It's getting warmer with each rainfall@


梅雨。

なかなか止まない雨が続く。

これで何日、降り続いているだろう。
いくら梅雨でも珍しいくらい、毎日雨が降っている。

実際は、夜は晴れているらしい。
なぜか、朝から雨が降って、夜に晴れている。
運動部に所属する二人にとって、雨は、そんな降り方をどうかしてくれるなと願うような降り方をしていた。


「あめ、止まない ね」


室内練習も出来ない日。それはそうだろう、西浦の部は野球部だけではない。
他の部活の兼ね合いもある。そもそも、第二グラウンド自体はあるものの、逆に言えば外の施設は(規模だけは)そろっているものの、きちんとした機材や、室内練習場などはないのだ。だだっぴろい、バレー部やバスケ部といった、もともと室内競技である部が使う体育館以外は。
くじ運の悪い主将が引いてきたのは、他の部活に比べてもだいぶ少ない練習の割り当てで。


「どう しよう か」


せいぜい教室でストレッチして、簡単な運動をするばかりだ。校舎内は走ってはいけない、という建前から、それ以上の練習は望めない。
それなら、と。今までの試合の反省やら他校の動向分析やらをしてみても、そもそも日ごろからそんなことはしているわけで、特別時間を割いてやることといったら、別にない。
つまり、今、西浦高校バッテリーはひたすら時間があるのだった。


「あ べくん?」


一応練習という名の短いストレッチを終えて、他の部員が帰ってもなんとなく教室に残って外を眺めていた阿部と三橋は、ただ、一つの机を挟んで座っている。
外は雨のせいで、薄暗い。まだ、16時にもなっていないというのに。
阿部は外をぼんやりと眺めて。三橋は、そんな阿部を眺めて。


「わり」


阿部は一言断ると、改めて三橋に向き直った。少しだけ赤らんだ頬。不思議そうに見上げてくる、三橋の白目が勝った、でも大きな瞳。湿気のせいで、余計にあちこち跳ねて、フワフワ度を増している髪。


「いや、野球できねーし。雨だし。どうしようかって思ってさ」


阿部が正直に言うと、三橋は、ふひ、とくすぐったそうに笑った。


「あべ くんでも 何か 迷うの?」




[次へ#]

1/4ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!