SS B 声を出さずに、喉の奥で、おなかの中で、くすぐったく笑う。 自分だけの阿部、というのが嬉しくて。意外と子供っぽくて、自分に空を見せたいだなんて。 他の部員が知ったら、キモっ、とか、こわっ、とか言われるんだろうなと思う。 でも、自分にとっては、新しい一面を見る大事なこと。 大事で大事で。見落としたくない。 すべて見ていたい。掌に落ちてくる全ての彼を、受け止めたい。 ふと、背中に違和感を感じた。 ゆっくり動いている雲を見ているうちに、なんだか感覚がおかしくなっているのかもしれない。なんだか。 背中が、動いているような気がする。 『ほんと だ』 地面が動いている。 少しびっくりして、でも阿部の言葉に間違いがなかったことが嬉しくて、三橋はくすぐったいままだ。 動いてる地面はどんどんふわふわと自分を押し上げてくる。なんだか少し、背中が地面と離れている気がする。 『さすが に それはない、 よね』 どきどきしながら、自分で否定すると。 その瞬間。 [*前へ][次へ#] |