生まれ変わった関係
結局何も答える事が出来ない僕にもたらされたのは、彼にユキとのキスを見られてしまっていたという事実と、それを慰めたのが立花だという事実。
彼が泣いていた理由は、僕とキスした後のユキに会ってしまったからで。
その彼に、僕はとんでもなく酷い言葉を投げつけてしまったという事実だ。
『・・・最低だね。』
『君みたいな子に、親衛隊長なんてして貰いたくないな。』
―――っ、こんな酷い僕なんかより、彼が立花に惹かれるのは当然の事
「ま、星野の事が好きなアンタには関係のない事だろうけどね?」
そう言い残して浅生君が立ち去った扉をただただ呆然と眺め続けるしか出来なかったんだ。
それから先は、仲睦まじい二人を見かけるばかりで、僕には決別の言葉がもたらされた。
そして、彼は今、会長補佐として僕の目の前にいる。
「日向先輩。企画書の原案です」
「・・・・・」
「―――っ、あの、立花さんが今日中にって言ってました」
「・・・・・」
「っ――、えっと、あの……宜しくお願いします!」
返事もしない日向に勢いよく頭を下げると、彼はいつも通り会長室の中へと戻ってしまった。
まだまだ仕事が山積みなんだろう。そろそろ体育祭も近いしね。
実際、彼は良くやっていると思う。
朝早くやって来たと思えば給湯の準備をして、飲み物の用意をしてくれるし、掃除もしてくれる。
他人の手が入る事を嫌う僕たち生徒会には何より有難い事なんだ。
彼の仕事はもちろんそれだけじゃない。
補佐と言うだけあって雑用が殆どなんだけど、それって言い換えれば何でもこなさなければいけないっていう事なんだ。
日向も本当は分かっているんだ。
彼が、よく頑張ってくれているという事実を。
だからこそ何も言わずに書類を受け取っていたんだ。
彼の仕事に文句の付けようがないからね。
―――頑張れ。
応援する言葉を口にする事は出来ないけれど、せめて心の中でだけは応援させてほしい。
避ける必要がなくなった分だけ、傍に居れるようになった分だけ、手助けしてやれると思うから。
もちろん目に見えて―――なんていうのは無理なんだけど。
でも、少しでも、君の力になりたいんだ。
新しく生まれ変わった僕たちの関係は、どんな風に進んで行くのかは分からないけど。
どんな未来になろうとも、僕はきっと、彼と共にありたいと願い続けて行くことだろう……。
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