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あなたが幸せになれますように
「あなたはもう二度と元の体に戻れないの」

突然そう言われた
組織は壊滅してAPTX4869のデータも手に入れた…のに

「じょ、冗談だろ?」

彼女がこんな冗談を言わないことくらい分かっている
けど

「解読剤は完成したわ。でもあなたは何度もこの薬を服用して元の体に戻ったでしょ?だから…」

「耐性ができてしまった…」

「…ええ」

思い浮かぶのは幼馴染の顔

「私が!私があの薬を作らなければ工藤くんは!!」

哀の目から涙がこぼれ落ちた

「オメーは何も悪くねぇよ。」

そう笑顔で言いハンカチを手渡す

「でも!!私がいなければあなたは!!」

「全て自業自得さ。お前は十分苦しんだ。だからもう幸せになれよ。な!」

沈黙が訪れる

「あ!俺もう帰らねぇと!蘭に怒られちまう!」

そう言って玄関へ駆けて行った
その後を博士は追った

「新一…」

「俺は大丈夫だって!一番辛いのはあいつだから。博士、灰原を頼むぜ!じゃあな!」



どうしてだろう
帰り道がひどく長く感じた



「ただいまぁ〜」

「コーナーンくーん?」

「あはは〜ごめんなさい」

「どうせ博士の作ったゲームに夢中になってたんでしょ!?」

「ははは…あたり…」

「ったくー…そうだ!今日はコナンくんの好きなハンバーグよ!」

「やったぁ!」

「早く手を洗ってらっしゃーい!」

「はーい」



「新一くんは大丈夫じゃから」

「何言ってるのよ…一番辛いのは…工藤くんよ…」



「このハンバーグすごく美味しい!!」

「そう!?コナンくんのために頑張って作ったのよ!」

「さっすが蘭姉ちゃん!」

「お父さん、美味しい!?」

「…あ、あぁ!」

小五郎はコナンに対して何か違和感を抱いていた
何とも分からぬものだが



うまく…笑えていただろうか


携帯電話と変声機を手に取った



「さーて寝ようかなー!」

PLLLL
誰からだろう

ディスプレーには工藤新一の文字

「もしもし?!新一?!」

「あぁ…久しぶりだな…」

聞こえてくる待ち望んだ声

「久しぶりだなじゃないわよ!一体いつになったら帰って…」

「蘭…俺…もうそっちへ帰れなくなった…」

「な、何言ってる…の…嘘…よね?」

「事件が難航しててよ…散々待っててくれって言ってたのに…ごめん」

「ううっ…」

「俺のこと…忘れていいから…じゃあ…な」

そこで電話は切れた

新一…どうして…ただの幼馴染の筈なのに
新一…どうして…涙が止まらないよ


蘭の部屋の前に来た
扉越しにすすり泣く声がする

あぁ…俺は本当にバカな探偵だ




辺りは暗闇で
何も見えなくて
手探りで進んで行くと

「蘭…!!」

「どうして!!私はただ、あなたが戻るのを待っていただけなのに!!」

俺が悪いんだ
分かってる
頼むから…そんな目をしないでくれ

「新一なんて!!新一なんて!!」



「ハッ」
夢…か…


いつも通りの風景
蘭がせっせと朝食を作り
おっちゃんは新聞を広げている

「あ、コナンくんおはよう!」

「おはよう蘭姉ちゃん!おじさんもおはよう!」

「あぁおはよう」

何気ない会話

「コナンくーんこれ持って行ってー!」

蘭の元へ歩み寄る
目元には隈が
寝れなかったんだねあの後

「はい!卵焼き!中にネギをいれてみ…」

「?」

「新…一…?」

幻覚でも見ているのだろうか
夢で見たあの目をしている

「違うよ?僕はコナン。新一兄ちゃんじゃないよ!」

「ハッ…そ、そうよね!コナンくんが新一なわけないよね! 」

「うん!」

「じゃあこれ持って行ってね!」

「はーい!」




もう多くは望まないからさ

せめて

せめてこの願いだけは






あなたが幸せになれますように








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あきゅろす。
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