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ミリバ 短編集
ハロウィン騒動@
以降、ハリーがクィディッチの練習に向かうのを時々、見かけるようになった。

玄関ホールで、階段を下りて来たハリーにマロンは声を掛けた。



「あっ、トゥリエル先生。おはようございます」



ハリーが立ち止まる。



「朝練?頑張ってるね。今から試合が楽しみね?」

「今年こそは、って皆やる気なんですよ」



ハリーが楽しげに言った。



「そうなんだ。でも張り切り過ぎはダメよ?」

「はい、気をつけます。それじゃ、僕、練習があるんで」



ハリーはそう言うと駆け出して行くのを、優しく見守る。



ハリーに箒を送ってから彼と話すことが多くなりつつある。これから待ち受ける沢山の困難に彼が耐えられるように、頑張れるように。

強力な保護呪文と等しい聖水を施したから、一年は大丈夫だろう。

踵を返そうとしたその時、目の前を横切って行く赤毛の双子と叢雲。子世代悪戯仕掛人は愉快そうに走り去って行く。

え、何?何事?



「貴様らあぁぁぁあぁぁ!!!」



その後を追うように走って行く背中に蝙蝠の羽を生やしたセブルスが、鬼武者の如く走っていったのはきっと幻だったと思っておく。

私は何も見ていない。

遠くの方でセブルスがグリフィンドール三十点減点と叫んでいた。

私は何も聞いていない。



***



数百匹もの蝙蝠が壁や天井で羽をばたつかせ、もう千匹が低くたれこめた黒雲のように テーブルのすぐ上まで急降下し縦横無尽に飛び回っている。ジャックオーランタンの中の蝋燭の炎をちらつかせた。

校長の一声でそして、すべてのテーブルの上、突如金色の皿に乗ったご馳走が現れる。大喜びの声を上げ生徒達は料理を堪能しはじめた。

となりをチラリと見ては、そこには既に蝙蝠の羽はないセブルスが不機嫌さを、だだ漏れしている姿があった。こころなしかローストビーフを切り分ける様子が尋常ではないことが、ありありと伝わる。視線の先、グリフィンドールのテーブルにいる叢雲を睨みながら。恐い。

恐れ多くも叢雲ただ一人がセブルスに“トリック オア トリート”と言ったのは既に周知済みだ。



勇者 叢雲。スリザリンの一部の生徒達を除いて皆が彼を称賛したとか。



「セブルス、」

「………なんだ」



いつもの心地好いベルベットボイスではなく地の底を這うようなそんな声に一瞬だけど恐縮してしまった。



「犬に気をつけてね」



眉間のシワが三割増しの彼に視線を向ければ、睨まれたのは必須で。慣れっこです私には効果がない。



「お得意の予言とやらですか」



嘲笑うような言葉にツキンとした痛みが走る。え、なぜに?



「占い学O・優だった私が言うんだから文句ある?」

「ありますな」



ムカちん。



「はぁ、これあげる」



無理矢理セブルスの右手に薬瓶を持たす。副作用が少なくどんな怪我にも効く、レヴュン製薬を。



「これは?」

「万能傷薬、レヴュン製薬」

「………」



何か腑に落ちなさそうな表情だったけど黙って懐に仕舞ったからよしとしよう。




そういえば、と。マロンは大広間中を隈なく探したが、ハーマイオニーはいないようだ。

代わりに楽しそうに話をするハリーとロンを見つけて、マロンは苛々とした感情が込み上げる。

その時、大広間の扉が開き、クィリナスが全速力で駆け込んできた。ターバンは歪み、顔は恐怖で引きつっている。殆どの者が彼を見つめる中、クィリナスは大広間の中央付近で、あえぎながら言った。



「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」



その場でバッタリと気を失ってしまった。まさに大混乱。隣の席のダンブルドア校長が立ち上がり耳を塞ぐ。

校長の掲げた杖の先から紫色の爆竹を何度か爆発させて、騒ぐ生徒達を静かにさせた。



「監督生よ」



重々しい校長の声が大広間に轟いた。



「すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように」



特にパーシーは水を得た魚だ。 教員席まで、よく聞こえる。



「僕について来て! 一年生はみんな一緒に固まって! 僕の言うとおりにしていれば、トロー ルは恐るるに足らず! さあ、僕の後ろについて離れないで! 道を開けてくれ。一年生を通し てくれ! 道を開けて。僕は監督生です!」



ぞろぞろと生徒達が其々の監督生の後に付いて行くのを見守る。わかっているとはいえ、ハーマイオニーのことが心配で堪らない。大広間に、いなかったハーマイオニーはトロールのことをもちろん知らない。

ふと隣を見ればセブルスはいなく、後ろ側で校長が教員達に指揮を取っている。



「トゥリエル教授、クィレル教授を起こしてもらえんかの」

「わかりました」



ダンブルドア校長に頷き、倒れているクィリナスの元に駆け寄り仰向けにさせる。ん、脈は異常ないね。



「クィリナスーーーーおきてーーーー」



ゆさゆさゆさ。ペチペチ。

体を揺さぶり、頬を軽く叩き唸るも起き上がらないクィリナスに痺れを切らしたマロンは杖をクィリナスに向け容赦なく「アクアメンディ、水よ」と、唱えた。



「ぐっ…」



目をしぱつかせ何が起こったのかと放心状態のクィリナスの顔を覗くようにマロンは言った。



「トロールは、地下室のどこ?」


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あきゅろす。
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