ミリバ 短編集
ドラゴンの卵
試験が近づくにつれ、山のような宿題が各学年に出された。それをこなしながら、ハリー達は習った呪文を再確認した。
嘆くロンを尻目に、ハリーはパラパラと本を捲る。
「ドラゴンの血の利用法とか、こんなの全部とっても覚えられないよ」
「暗記の仕方を教えるから、ロンのスキャバーズを貸してよ。変身術のテストは生物を無機物に変える課題が出ると思うの」
「えー」
話題を自分のペットから逸らすためか、ロンは本棚の陰にいたハグリッドを見つけた。ハリーが賢者の石のことを彼に訊ねようとしたら、あとで小屋に来るようにと言ってごまかした。
ハグリッドのこそこそした態度を不審に思ったのか、テスト勉強に飽きたのか。ロンは彼のいた本棚に向かった。戻ってきたロンはためらいながら、「ドラゴンだよ」と言った。
それを聞いたハリーは思い出したとばかりに手をたたく。
「初めてハグリッドに会ったとき、ずっと前からドラゴンを飼いたいって言っていた」
「でも、僕たちの世界じゃ法律違反だよ」
ロンの言うとおり、1709年のワーロック法でドラゴンの飼育は違法になっている。もしも見つかり下手すればアズカバン行きだ。
不安を抱えながら三人がハグリッドの小屋に行くと、カーテンは全部閉まっていた。
誰だ?と鋭い声でハグリッドは確認を取ってくる。
中はサウナ状態だ。暖炉で火花の弾ける音を聞きながら、イタチ肉のサンドイッチを勧められた。ハリーはそれに手をつけず、フラッフィー以外に賢者の石を守っているものについて聞いていた。
教えることはできん、と大きな手を振ったハグリッドはさらに続けた。
「第一、俺自身が知らん」
「ねえ、ハグリッド。私たちに言いたくないだけでしょう。でも絶対知っているのよね。だって、ここで起きていることで、あなたの知らないことなんかないんですもの」
ハーマイオニーは優しい声で訊ねた。証拠にハグリッドは得意そうに、黒いもじゃもじゃのひげを動かしている。
ダンブルドアの信頼を得ている、とハーマイオニーにだめ押しされて、ハグリッドは話す気になったようだ。
「まあ、それくらいなら話しても構わんだろ」
賢者の石を守る人物が明かされていった。
まずハグリッド。闇の魔術に対する防衛術を教えるクィレル先生。寮監の先生は全員参加している。疑惑のスネイプもそのうちのひとりだ。
頼みのフラッフィーはハグリッドだけが大人しくさせられるらしい。それを誰にも口外していないか。ハリーが確認を取ると、ハグリッド自身とダンブルドア先生しか知らない、という答えがハグリッドから返ってきた。
とりあえず一安心だ。
「窓開けていい? 運動したせいでよけい暑くなっちゃった」
「悪いな、ロン。それはできん」
「ハグリッド……あれは何?」
できれば聞きたくない、といった様子でハリーは聞いた。
三人は見た。炎の燃え盛る暖炉に置かれたやかんの下に、大きな黒い卵のようなものがある。ハグリッドは賭けでドラゴンの卵を手に入れたと語った。ハーマイオニーは深刻な表情で訊ねた。
「もし卵が孵ったらどうするつもりなの? この家は木でできているのよ」
ハグリッドは彼女の忠告を聞き流して、うきうきしている。心配事がまた一つ増えた。
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