ミリバ 短編集
グリフィンドールvsハッフルパフ
とうとうクィディッチの試合当日となった。ロンとハーマイオニー2人は更衣室の外でハリーを見送った。
ハリーと別れると、ロンたちはネビルの隣に座った。その隣にはトゥリエルまでいるのだから、ロンは驚いていた。教員席よりもこっちで応援したいという。
ネビルはクィディッチの試合なのになぜ2人が杖を持ってきているのかとても不思議そうにしていたが、ハリーに何かあったときのためにといくつか魔法を練習してきていた。
特にロンは「足縛りの呪い」を、ハーマイオニーはもし箒から落下したときのために落ちる速度を緩める呪文や盾の呪文などをより強くかけられるようにしていた。どれもネビルからヒントを得たものだ。
怪しい動きがないかと、グラウンドのスネイプや観客席を見回す。するとダンブルドアが座っているのが見えた。
「見て、校長先生よ!あの人がいる前で悪さができる人なんていないわ!」
それにはロンも納得したようで、少し笑顔を取り戻す。ハリーは必ず、スニッチを取る。確信めいたものがあった。
「さぁ、プレイボールだ。アイタッ!」
誰かがロンの頭を後ろからこづいた。ドラコだ。
「あぁ、ごめん。ウィーズリー、気が付かなかったよ。」
ドラコはクラッブとゴイルに向かってにやりと笑う。
「この試合、ポッターはどのくらい箒に乗っていられるかな?誰か賭けるかい?ウィーズリー、どうだい?」
グリフィンドールに嫌味を言うためだけに、ドラコ達はグリフィンドールの観客席にいるようだった。
ロンは答えなかった。ジョージがブラッジャーをスネイプのほうに打ったという理由で、スネイプがハッフルパフにペナルティー・シュートを与えたところだった。
「グリフィンドールの選手がどういう風に選ばれたか知ってるかい?」
ちょうどスネイプが何の理由もなくハッフルパフにペナルティー・シュートを与えたところだった。
「気の毒な人が選ばれてるんだよ。ポッターは両親がいないし、ウィーズリー一家はお金がないし…ロングボトム、君もチームに入るべきだね。脳みそがないから。」
ネビルは顔を真っ赤にしたが、座ったまま後ろを振り向いてドラコの顔を見た。
「マルフォイ、ぼ、僕、君が10人束になっても敵わないくらい価値があるんだ。」
つっかえながらも言うネビルに、ドラコたちは大笑いした。
「ロングボトム、もし脳みそができてるなら、君はウィーズリーより貧乏だよ。つまり、生半可な貧乏じゃないってことさ。」
「マルフォイ、これ以上一言でも言ってみろ。ただでは…」
「ロン!」
突然ハーマイオニーが叫んだ。
「ハリーが!」
「どこ!?」
ハリーはものすごい急降下を始めた。その素晴らしさに観衆は息をのみ、大歓声を上げた。ハーマイオニーは祈るように胸の前で指を絡めてハリーを見つめる。ハリーは弾丸のように一直線に地上に向かって突っ込んで行く。
「運がいいぞ。ウィーズリー、ポッターはきっと地面にお金が落ちているのを見つけたのに違いない!」
ドラコの言葉にロンがついに切れた。しかしロンが勢いよく掴みかかろうとしたのより先に、ある人物が先に動いた。
「いい加減にしなさい!」
二人に割って入ったのはマロンだ。
「また減点されたいのですか」
「っ!」
「行けっ!ハリー!」
ハーマイオニーの声に再びドラコからハリーに視線を向けた。
空中では、スネイプがふと箒の向きを変えたとたん、耳元を紅の閃光がかすめていった。ほんの数センチの間だった。次の瞬間、ハリーは急降下を止め、意気揚々と手を挙げた。その手にはスニッチが握られていた。
スタンドがどっと沸いた。新記録だ。こんなに早くスニッチを捕まえることは前代未聞だった。
「やったわ!試合終了よ!ハリーが勝った!私たちの勝ちよ!グリフィンドールが首位に立ったわ!」
試合終了後、更衣室から着替え終わったハリーが箒を手に出てきた。
箒置き場に着いたとき、城の正面の階段をフードをかぶった人物が急ぎ足で降りてきた。明らかに人目を避けている。脚を引きずるように歩く人物をハリーよく知っていた。
「スネイプだ。」
スネイプは禁じられた森へ足早に歩いて行く。
ハリーは箒に跨って飛び上がり、そっと滑走しながらスネイプの跡をつけるが、木が深々と繁っているせいで見失ってしまった。しかし、微かに人の声が聞こえる。
声のするほうに従ってハリーは移動する。そして一際高いブナの木に音を立てずに降りた。ハリーは枝の上に登り、葉っぱの影から下を覗き込んだ。
木の下の薄暗い平地にスネイプはいた。一人ではない。一緒にいるのはクィレルだった。表情は見えないものの、いつも以上に吃っていた。
「…な、なんで…よりによって、こ、こんな場所で…セブルス、君にあ、会わなくちゃいけないんだ。」
「このことは2人だけの問題にしようと思いましてね。」
スネイプの声は氷のようだった。
「生徒諸君に『賢者の石』のことを知られてはまずいのでね。」
思わずハリーは身を乗り出した。クィレルは何かもごもごと言っているが、スネイプがそれを遮った。
「あのハグリッドの野獣をどう出し抜くか、もう分かったのかね?」
「で、でもセブルス……私は……」
「それから、トゥリエルにも取り入ろうとしているそうだな。」
最近慕っている先生の名前が出てハリーは頭の中に?が浮かぶ。
「と、取り入るなんて、そ、そんな。ひ、人聞きの悪い」
「クィレル、私を敵に回したくなかったら…」
スネイプはぐいっと一歩前に出た。
「ど、どういうことなのか、私には…」
「私が何を言いたいか、よく分かってるはずだ。」
ふくろうが大きな声で鳴く声がする。驚いたハリーは木から落ちそうになったがなんとか持ち直す。
「……貴方の怪しげなまやかしについて聞かせていただきましょうか。」
「で、でも私は、な、何も……」
「いいでしょう。」
スネイプは再びクィレルの言葉を遮った。
「それでは近々、またお話をすることになりますな。もう一度よく考えて、どちらに忠誠を尽くすのか決めておいていただきましょう。」
スネイプは頭からすっぽりとマントを被り、大股に立ち去った。もう暗くなりかかっていたが、その場に石のように立ち尽くすクィレルの姿が見えた。
***
「貴方ったら、いったいどこにいたのよ?」
談話室に入ると、ハーマイオニーの甲高い声が耳に入った。
「僕らが勝った!君が勝った!僕らの勝ちだ!」
ロンはハリーの背中をぽんぽん叩きながら言った。
「それどころじゃない。」
ハリーは息もつかずに言った。
談話室ではまずいので空き教室を探し、ハーマイオニーが防音呪文をかけた。
そして先程聞いた会話を話した。
「僕らは正しかった。『賢者の石』だったんだ。それを手に入れるのを手伝えって、スネイプがクィレルを脅していたんだ。
スネイプはフラッフィーを出し抜く方法を知ってるかって聞いていた……それと、クィレルの『怪しげなまやかし』のことも何か話してた……フラッフィー以外にも何か別なものが石を守っているんだと思う。
きっと、人を惑わすような魔法がいっぱいかけてあるんだよ。クィレルが闇の魔術に対抗する呪文をかけて、スネイプがそれを破らなくちゃいけないのかもしれない……」
「それじゃ、賢者の石が安全なのはクィレルがスネイプに抵抗している間だけということになるわ。」
ハーマイオニーが警告すると、ロンも声を上げる。
「それじゃ、3日ともたないな。石はすぐなくなってしまうよ。」
「だけど、トゥリエル先生に取り入るってところが分からないわ。トゥリエル先生がクィレルの味方だと不都合でもあるのかしら?二人がよく一緒にいるのよく見るもの」
それにはハリーとロンは首をかしげるしかなかった。
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