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ミリバ 短編集
紅茶とアイスブルー
「はぁー…」



暖炉に薪を放り入れ、マッチで火を着けるというマグル式で暖をとる。モコモコのストールを首に巻いて、ココアを炒れる。

…七人分を。





***


十一月入り、寒さが増した。学校を囲む山々には白色に変わり、湖の表面は薄く凍りが張っている。

校庭には毎朝霜が降り、ハグリッドがクィディッチ競技場のグランドで箒の霜取りをしているのを窓から、ぼんやりと見つめる。


マロンの研究室兼私室もあるため結構広い。畳の上の炬燵には、顔なじみのメンバーが寛いでいたり勉強に励んでいた。

机に、どっさり乗った宿題と睨み合う少年少女たちは無言で羊皮紙と最速睨めっこだ。

今日は土曜日の午前。ちょっと出掛けてくると言って返事が返してくれたのはチルドだけ。悲しい。



研究室を後にしたマロンは、校長室まで続く階段を寒さに震えながら足早に翔けて行く。

階段を上り終わり、マロンは校長室の扉をノックした。

カチャリと扉が開く。



「…よく来たのう、マロン」



部屋の主は紛れもなくホグワーツ魔法学校長、アルバス・ダンブルドアその人だ。ブルーの瞳と視線を交わす。

マロンはソファーに腰を下ろした。

アルバスはティーセットを準備し、予め沸かしておいただろうヤカンからティーポットへ注がれる。お茶請けのクッキーは香ばしく、ハニーデュークスのココナッツクッキーが皿に山盛りなのは、ツッコまないでおこう。

カップから湯気が立ち上り仄かなハニーキャラメルの香りが鼻を擽る。

朝食時の梟便で、アルバスからティータイムのお誘いを受けた。正式な教師になって二ヶ月。色々と話をしよう、手紙にはそう書かれてあった。



「どうじゃ、慣れたかの?」

「はい。何とかやっております」



紅茶を一口に含み、ふと思い出したようにアルバスに、あることを問いかけた。



「アルバス…」

「なんじゃ?」

「どうしてハグリッドにグリンコッツから賢者の石を回収するように命じたの?なぜ、うっかりやのハグリットに。ハリーと親しいハグリットに。まるで…」



誘導じゃないか、という言葉は飲み込んだ。

机の上に散乱していた書類を片付けているとき目に留まった日刊予言者新聞を見て、思い出していた。

アルバスはカップから視線をマロンへと向ける。

回収させた、その日のすぐ後にグリンコッツが襲撃された。賢者の石とは、よっぽど凄い物なのなのだろう。興味がないわけではないが、保管場所をここに移すぐらいだ。

回収した日と襲撃された日が同日直後なのは決して偶然ではないとマロンは思っていた。

アルバスは事前に回避した。

ということは予め賢者の石が狙われるということがわかっていたかのようだ。



アルバスは黙ったまま、こちらへ視線を向けるだけ。



「アルバスが何を考えているのか私にはわからない。けれど、」

「マロン」



アイスブルーの瞳が射ぬくように見つめてくる。



「ハリーは大丈夫じゃ」



まるで迷子の子供をあやすかのような声でアルバスは言った。私が何が言いたいのか、言いたかったのかを見抜いていたように。







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