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ミリバ 短編集
ハロウィン騒動A
クィリナスが起きたのを確認した私は地下の女子トイレへと向かう。廊下を走り階段を飛び降り、するとすぐに悪臭が流れてきた。

見回した何本かの廊下の一つから、壁が割れる音や陶器が粉々になる音が聞こえ駆け出す。女子トイレが見え、扉は開いている。飛び込むと中は、いっそう酷い臭いが漂っている。

トイレは壊され割れた洗面台からは水が溢れ出し衝撃の凄さを、ものがたり床中に瓦礫が散乱していた。

「ハリー!ロン!ハーマイオニー!」

トイレの真ん中に大きな灰色の生き物トロールが暴れていた。その頭に、しがみついているのはハリーでトロールは鼻から杖が刺さったまま、棍棒を振り回していた。

杖を取りだし動きを止める。

「アレスト・モメンタム、静止せよ! 」

唖然としたままのロンを一喝する。

「ロン、呪文を言うんだ!」

隣で叫ぶと、ロンは目を見開き何かを閃いたらしい。杖を持ち、手首をしなやかに振った。

「ウィンガーディアム レビオーサ!」

トロールの手から抜けた棍棒がヒュッと高く上がった。そしてそのまま落下する。ドゴッ!と生々しい音を立ててトロールの頭に落下し、たたらを踏んだトロールがドシンッと床に倒れ る。地震が起こったように部屋が揺れた。

部屋の中を沈黙が流れ、私はすぐさまハーマイオニーに駆け寄った。

「ハーマイオニー!」

その声に放心状態から抜け出したハーマイオニーが此方を見るや「先生、」と弱々しく呟いた。

「これ…死んだの?」
「いや、気を失っただけだと思う」

ハーマイオニーは注意深くトロールを見ていた。ハリーがその鼻から杖を抜き取ると、三人は顔を歪めた。

外からバタバタと複数の足音が聞こえたと思った時には、ミネルバ達がトイレに飛び込むように入ってきて顔面蒼白で私達を見回し、最後にトロールを見た。心なしか震えているのかわかった。

遅れて最後にクィリナスが入るとトロールを見るや、そのままへたり込んでしまった。セブルスと視線が合わさり、視線で殺されるんじゃないかってくらい悪人より悪人らしい顔で此方を睨まれる。

「一体、これはどうゆうことですか!」

完全にお怒りのミネルバが前に出た。

「殺されていたかもしれないのですよ?あなた達、なぜ寮に帰っていないのです?!」

怒られたハリーとロンは俯く。

「マクゴナガル先生、私なんです!」

とっさにハーマイオニーが叫ぶ。私から離れると、すぐにミネルバに向かう。

「私がトロールを探しに来たんです。私、私一人で倒せると思ったんです。本で読んでトロー ルのことはよく知っていたから」

ロンが杖を落とした。ハリーも口を、あんぐりと開きハーマイオニーを見た。庇ったのだ、二人を。

「みんな、私を探しにきてくれたんです。みんなが来なかったら、私、今頃死んでいました。 トゥリエル先生とハリーとロンがトロールをノックアウトしてくれたんです!誰かを呼びに行く時間もなくて、 私、もう殺される寸前で…」

ハリーもロンも、その通りですと顔を装った。

「まぁ、そう言うことでしたら……」

ミネルバは三人を、じっと見つめ溜め息を吐いた。

「Ms.グレンジャー、なんと愚かしいことを。たった一人で野生のトロールを捕まえようなんて、そんなことをどうして考えたのですか?」
「それは……」

ハーマイオニーは項垂れた。ハリーは言葉も出ず、規則を破るなんてハーマイオニーは絶対そんなことをしない人間だと知っている。その彼女が規則を破ったフリをしたのだから。

「Ms.グレンジャー、グリフィンドールから五点減点です。貴女には失望しました。 怪我がないならグリフィンドール塔に帰った方がよいでしょう。生徒たちがさっき中断したパーティーの続きを寮でやっています」

ハーマイオニーは小さく返事をすると、ミネルバは今度はハリーとロンの方に向き直った。

「先ほども言いましたが、貴方達は運がよかった。でも大人の野生トロールと対決できる一年生はそうざらには居ません。一人五点ずつあげましょう。ダンブルドア先生にご報告しておきます。帰ってよろしい」

ハリーとロンは心なしか嬉しそうに急ぎ足にトイレを出ていった。ミネルバはホッとし、安堵の息を漏らすと、こちらへ向き直った。

「怪我はないですね?」
「ええ」
「よろしい。クィレル先生はトロールの始末を」
「わ、わかりました」
「私達は其々校内を見回りましょう」

ミネルバの指示に頷き、そそくさと出て行こうとするもセブルスに腕を捕まれてしまった。逃げられなかったか。

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