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ミリバ 短編集
吉報

(ハリー Side)




マクゴナガル先生は飛ぶようにして歩いていった。

あれ?なんか機嫌がいい?

ハリーは殆ど駆け足になってついていくのに必死だ。


このまま退学になってしまうのだろうか。あのダーズリー家に戻らなくてはいけないのだろうか。

頭の中が真っ白で、なにも考えられない。



マクゴナガル先生は、ある教室の前で立ち止まり扉を開けて中に顔を覗かせた。



「フリットウィック先生。
申し訳ありませんが、ちょっとウッドをお借りできませんか」


ハリーは首を傾げた。


ウッド?



どうして生徒を叱るのに生徒を必要なのか。


呪文学の教室から出てきたのは逞しい五年生で、あっちも何事だろうという顔をしていた。



「二人とも私についていらっしゃい」



マクゴナガル先生は、それだけ言って、また同じ調子で廊下を歩き出した。

やっぱり、機嫌がいい…



物珍しそうに、こちらを見ているウッドにハリーは気になって仕方がなかった。



「お入りなさい」



マクゴナガル先生は使われていない教室を示した。

黒板に悪戯書きなぐっていたピーブズを教室から追い出し、先生はドアを閉めて、ハリー達に向き直った。



「ポッター、こちら、オリバー・ウッドです。

ウッド、新しいシーカーを見つけましたよ」



その言葉にウッドは驚嘆し、そして綻んだ。



「本当ですか!?」

「間違いありません。この子達は生まれつきそうなんです。あんな物を私は初めて見ました。ポッター、初めてなんでしょう?箒に乗ったのは」



ハリーは黙って頷いた。

如何やら、退学処分という訳ではないらしい。マクゴナガル先生は、ウッドに経緯を説明している。



「ポッターは今、手に持っている玉を城の壁ぎりぎりで掴みました。掠り傷一つ負わずに。チャーリー・ウィーズリーだってそんな事出来ませんでしたよ」



ウッドは、ぱあぁっと顔を輝かせた。



「ポッター、クィディッチの試合を見た事あるかい?」

「い、いいえ」

「ウッドはグリフィンドール・チームのキャプテンです」

「ポッターはシーカーだな、やっぱり。君の体格はシーカーにぴったりだ。相応しい箒を持たせないといけませんね、先生。ニンバス2000とか、クリーンスイープの7号なんかがいいですね」

「私からダンブルドア校長先生に話してみましょう。一年生の規則を曲げられるかどうか。是が非でも去年よりは強いチームにしなければ。あの最終試合でスリザリンにコテンパンにされて、私はそれから何週間もセブルス・スネイプの顔をまともに見られませんでしたよ……」



マクゴナガル先生は、眼鏡越しに厳格な目つきでハリーを見た。



「ポッター、貴方が厳しい練習を積んでいるという報告を聞きたいものです。さもないと処罰について考え直すかもしれませんよ」

「!!」



そして、にっこりと微笑んだ。


「…ハリー、貴方のお父様がどんなにお喜びになった事か。お父様も素晴らしい選手でした。きっと、お喜びになった事でしょう」

「一年生の選手なんて、ここ百年、一人もいなかった。君は最年少の選手だ――」



然し、そこで授業終了を告げるチャイムが鳴り、廊下にどっと生徒が出てきた。



「じゃあ、来週から練習開始だ。誰にも言うなよ。

君達の事は極秘だ――
ルールは、練習の時に教えるよ」



ウッドはそう言うとマクゴナガル先生に軽く頭を下げ、廊下を曲がって見えなくなった。



えっと…、喜んでいいのだろうか。




*****




「まさか」



夕食の時にロンが信じられない顔で、そう言った。



「シーカーだって?だけど一年生は絶対ダメだと……なら君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年以来かな…」

「……百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ。来週から練習が始まるんだ。でも誰にも言うなよ?ウッドは秘密にしておきたいんだって」



「すごいな」



振り返れば、いつの間にかロンの双子の兄と叢雲先輩がいた。

ジョージが小さく低い声で言った。



「ウッドから聞いたよ。僕達も選手だ―――ビーターだ」

「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ、なぁ叢雲」

「ああ!」



凄く嬉しそうな顔なもんだから僕は自然に笑みがこぼれた。



「ハリーが来たからウッドは小踊りしてたぜ」

「じゃあな。僕達行かなくちゃ。リーが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」


そのまま双子と先輩は行ってしまった。



入れ違いに二人の生徒を従えたマルフォイがやってきた。



「ポッター、最後の食事かい?マグルのところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」



相変わらず嫌みな奴だ。



マルフォイの声に先程まで笑っていたロンの眉間にシワがよった。



「地上では、やけに元気だね。小さなお友達もいるしね」



上座には先生達がいるのでマルフォイを睨みつけるだけ。

生憎、ダーズリー一家のおかげで皮肉には慣れている。



「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ――相手には触れない。どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないか?」



マルフォイが、せせら笑う。



「もちろんあるさ。僕が介添人をする。おまえのは誰だい?」



今まで眉間にシワをよせて黙っていたロンが言った。



「クラッブだ。真夜中でいいね?トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね」



マルフォイが、そう言い残していなくなるとロンは決闘について説明してくれた。

しかし、そこで聞き耳を立てていた少女がいた。



「ちょっと、失礼」



グレンジャーだ。



「聞くつもりはなかったんだけど、あなたとマルフォイの話が聞こえちゃったの……夜、校内をウロウロするのは絶対ダメ。もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてよ。それに捕まるに決まってるわ。全くなんて自分勝手なの」

「大きなお世話だよ」

「じゃあ」



グレンジャーを、あしらって寮に戻った。作戦を考えないと。





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あきゅろす。
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