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ミリバ 短編集
┃邂逅
迂闊だった。





マルフォイ邸(到着してから知った)で開かれたクリスマスパーティーで私は壁の花と同化していた。



「(レギュ先輩から誘われたものの、本人がいないってどーゆーこと…)」



見渡せど行き交うのは貴族。着飾った婦人。ウェイター。



そして闇に通じる者達。



んでもって彼はいない。まぁ、ブラック家次期当主として挨拶周りでもしているんだろうか。
きっとそうだ。



「もちゃもちゃ…(この料理うまいな…さすが貴族)」



せっかくの宴なのだ、楽しまないでどうする(料理限定)。





「楽しんでいただいてますかな?リトルプリンセス」



頭上から降る声に見上げれば、そこにはデコが輝か…、失礼
このパーティーの主催者が立っていた。



ルシウス・マルフォイ

死喰い人の一人…





「Mr.マルフォイ、お招きいただき感謝しますわ」



スカートの裾を少し持ち上げて
お嬢様らしく…猫かぶり。



社交辞令?そんなもの知りません。












このパーティーは親族、親戚とその知り合いのみの集まりらしい。

もしかしたらここに帝王がいるかもしれないわけだ。



「…、」



闇の帝王がクラッカー持ってクリスマスパーティーとかありえない(笑)

映画版の復活したあの姿で想像してみようよ、面白いから。滑稽だ、滑稽すぎる!


うっかり口を滑らせてしまったらアバダされそうで怖い。



ああ、でも闇の帝王…もといトム・リドルという人物は容姿端麗だと記憶にある。私にはどうでもいいが。



「………」



マロンはスッと、目を細めた。




内ポケットにある“インスタントポートキー”を布の上から撫でる。





いい?マロン、危うくなったらこれを使うのよ





母から渡されたインスタントポートキー…



まだ11歳の私を敵陣に送り込むとは、なんて親だ…

呆れて涙も引っ込むよ。

今の私には本だけの知識しかない、それだけでは戦えるわけがない。

まぁ、それだけは避けるが。



「「マロン!」」



聞き覚えのある声に視線を向ければ、そこには何故か正装姿のヴォルドとセシルが。

…ああ、こいつらも闇側かと納得する。



「よくわかったわね」

壁の花と化していたのに。



「まぁな」



得意げにヴォルドは言った。





それからしばらくしてから、夜風に当たるためバルコニーに出ると、そこには既に先客がいて…


風に靡く漆黒の長い髪に、ルビーの様な深紅の瞳。アルビノだろうか。闇夜の中、蝋燭の明るさによりそれは引き立つ。

そして秀麗…



(…あれ?紅眼といえば…まさか………)



私の記憶に間違いがなければ、目の前に佇むこの人物は、紛れもなく彼だ。



ヴォルデモート卿



あれ?ヴォルデモードだったけ?どっちでもいいや。

なんて事を考えていたら、いつのまにか彼は、すぐ目の前に立ち私を見下ろしていた。



んー、これがイケメンかと。でも、残念。私は外面イケメンが大嫌いだ。



ふと、彼はこちらを一見。不適に口の端を吊り上げた。

えっ!?一体、何さー!!




*****



(ヴォルデモート Side)



第一印象は不思議な子供だと思った。だが、纏う雰囲気は子供ではないと感じた。言うなれば大人びたといったところか。

同時に内に秘めし膨大な魔力を制御しているという事実。

常人ならば、大人であろうと自滅しているだろうその力。



ソレを手に入れたいと思った。





俺様よりも、あの老いぼれよりも…強大なソレを。



使い道を考えれば自然と頬が緩む。





こちらを見つめていた双眼が揺れ、微かに動揺しているのを見逃さない。それは恐怖からくるものではなかった。



ヴォ「…」

「綺麗な瞳、…ルビーみたいですね」



…。

この小娘は俺様が怖くないのだろうか。殺気をひしりと出しているのにもかかわらず怯える様子すらしない、その物乞い。



「あ、ごめんなさい。私、マロンって名前なの…お兄さんは?」



ニコニコと微笑むその姿に毒気を抜かれていくような錯覚を覚える。いや、錯覚ではなく実際にだ。

一見、ただの小娘が微笑んでいるそれは、無害に思えよう。

―だが、

もどかしい。それは。
俺様には必要のないもの。
やめろ、見せるな!



乾いた音が、二人だけしかいないバルコニーに響く。



気がつけば手を挙げていた。



「」



小娘は泣きも喚きもせず、赤くなった頬を抑えることもせず、こちらを見据えるだけ。



「―不安なの?」



不安?この俺様が?



ヴォ「笑わせる…」



未だに、そこに佇む小娘の前にしゃがみ赤くなった頬に触れてやれば、揺らめく瞳。それは恐怖から来るものではなく、ただ驚いているようで。



さて、これを物にするため本来ならば服従の呪文を用いるが、そうやすやすと、いかないだろう。


思考を働かせたところで、邪魔が入った。



「マロン」

「あ、レギュ先輩!」



死喰い人の一人レギュラス・ブラックの元へ、ぱたぱたと翔けて行く小娘に目を細める。



レギュ「…後輩の、ご無礼をお許し下さい」

ヴォ「いや、構わん」



深く頭を下げたレギュラス・ブラックに下がれと命じ、



マロ「レギュ先輩、」

レギュ「…?」

マロ「休暇明けたら学校で会いましょう…それから、」



こちらへ向けられた双眼。



マロ「お兄さん、部下は大切にしなきゃダメですよ」



……………………は?



マロ「あと、お兄さんとは別の形で会いたかったです」

ヴォ「………」



少女が言わんとしていることがわかった。光側だと。たけど自分の身を弁えている賢い小娘だと。



マロ「        」



―バシンッ


音を立てて少女の姿は、その場から消え去った。



ヴォ「…クククッ」

レギュ「、我が君?」



小娘の呟いた最後の言葉は、挑戦か。それとも俺様にとって必要のない無価値なものを与えようということか、面白い。

予言のこともある。片付いたら、手に入れよう。



(Side out)





*****




バクバクと煩い心臓を抑えて周りを見渡せば見馴れた自宅の庭だと、ベンチに座り息を整える。


やばかった。

あれは補食者の瞳だった。



口から漏れた息が白く、空中へと消える。



マロ「(狙われたなぁ…)」



なんて呑気に構えている自分に驚きだ。

今、彼は…ヴォルデモートは予言の方が優先だろう。


死を誰よりも恐れている可哀相な人。

正直、彼をどうこうしようとも思わないけど。



とにかく、





疲れた。

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