FF7short
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「なあ、名無子」
『はい、何でしょう?』
「…悪かったって」
『いーえ、クラウド君は悪くありませんよ?』
「なんでさっきから敬語なんだ」
『あら、いつもじゃなかったかしら?』
ここは今玄関のど真ん中。
クラウドはこれから家を出るとこで、私はそのクラウドを送り出すためにここにいる。
そして何故こんな険悪な雰囲気かというと、それはほんの数分前…。
‐‐‐‐‐‐
閉めたカーテンから細く光りが漏れだし、チュンチュンという小鳥の囀りが鼓膜を震わす。
いつものくせか早く目が覚めてしまったがいつもにしては目覚めが良くて、気分もイイ。
それもそのはず。
今日は待ちに待ったクリスマス!プレゼントも用意してるし、なにより今日くらいは一日中二人で過ごしたいもの。
ベッドに預けていた体を起こして延びをすると、隣にいるはずのチョコb…ゲフンゲフン!
クラウドがいないことに気がついた。
けど、少しした後に彼は戻ってきた。が…身仕度は済んでいて、まさにこれから出掛けようとしている様子。
この時間からして考えられることはひとつ。さっきまでのウキウキ気分はみるみる消滅していった。
『クラウド…まさか…』
「名無子、起きてたのか?」
『今日、仕事入ってる?』
‐‐‐‐‐‐
もうお分かり頂けただろう。
「悪かったって」
『何を言うのです。仕事が大事なのは大変素晴らしいことなのです。
悪い事など何もありませんよ』
「なんで諭す口調なんだ」
『あらあら、いつもこのような口調でしてよ』
「大丈夫か?もうキャラがばらばらだぞ」
『知らんわ。仕事やろ、さっさとお行きっ』
「………」
先程までのおしとやかな雰囲気とは逆にシッシッとやるかのように手を振ってくる名無子。
今日がなんの日かくらい俺にだってわかる。
だが今日だからこそ仕事が忙しく、休む事なんかできない。
「…………ハァ」
『…………』
「来るか?」
『…………へ?』
「一緒にくるか?」
『いいの?』
一気に表情が晴れていく名無子。
「クリスマス、だからな」
『やったー!行く!ちょっと待っててね。すぐ支度してくるからっ!』
子供のようにワ〜イと言いながら部屋に戻っていき、着替えて戻ってきてからフェンリルに跨がりセブンスヘブンへと向かった。
‐‐‐‐‐‐
「…俺はこんなの聞いてない」
「あら、いいじゃない。似合ってるわよ?」
店に来てすぐに俺と名無子は引き離されてなぜか着替えを強いられた。
名無子はデンゼルとマリン達に連れられ、2階へと登っていったが、おそらく彼女も同じ目にあっているはず。
そしてしばらくすると、上からどたばたと音がし、声も聞こえてきた。
『いやいやいや!ムリムリ!やっぱりさっきのままでいいよ!』
「大丈夫!似合ってるよ。」
『とにかく無理!うわー、足スースーする…』
「名無子達も終わったみたいよ?」
ティファの台詞が合図かのように階段の方から名無子が飛び出して来た。
その名無子の姿は赤いワンピースの上に赤いスカーフが掛かっていて、大きなリボンでスカーフをとめている。
スカートは太腿を隠せないほど短く、服の所々に白い綿が付いていた。
しっかり帽子も被っていて誰が見てもサンタの衣装だということは一目瞭然。
一生懸命に足を隠そうとする仕草がクラウドの視線を奪った。
だがクラウドと視線が合うと直ぐさま視線をそらし、近くの柱へと隠れてしまった。
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