[携帯モード] [URL送信]

FF7short
1

『ね、クラウドいいでしょ!』

「………だめだ」

『なーんで!?いいじゃん!』

「……ダメだ。戻してこい」



今現在天気は雨。
外からずぶ濡れになって帰ってきた名無子の腕の中には
目つきの悪い黒猫が一匹。

首輪もなく毛並みも乱れ放題。
野良だということは一目瞭然だった。


『クラウドの薄情者!可哀相とは思わないのか!?』

一層強く猫を抱きしめる名無子。
そのせいで表情が強張っている猫。

…お前の方がが可哀相とは思わないのか。


『……もういい!クラウドを頼った私が馬鹿だったよ。

クラウドが良いって言うまで私部屋入らないから!』


「何言ってんだ。風邪ひくぞ」

『馬鹿は風邪ひかないもんね』


「それもそうだな」

『ちょちょちょ!ちょいまち!本当に閉めないでよ!?』


じゃあ、お望みの通りに、と玄関の扉を閉めようとするとギリギリのところで足を差し込まれて阻止された。
本当にコイツは何がしたいんだ。


「なんだ、入らないんじゃなかったのか?」

『クラウド…本気でこの子を入れさせない気?』

「当然だ。猫なんか飼えるか」


『………強行手段しかないみたいだな』



ボソリとつぶやき、一呼吸おくとドアをこじ開け
クラウドと壁の微妙な隙間を縫って部屋に全力疾走しだし
寝室に入りこむと鍵を閉められてしまった。完全に閉じこもる気らしい。

訳のわからない行動の連発にクラウドは堪らずため息を零す。


それからどちらとも会話をすることなく沈黙が流れる。
数分し、先に動き出したのはクラウドの方だった。

閉じこもったままの名無子に痺れをきらし、とりあえず扉を開いて貰おうと声をかける。


「おい、いい加減に…」
『クシュン!!』

「………」



大方予想はしていた。
だが本当にここまで馬鹿だとは思わなかった。


「馬鹿は風邪ひかないんじゃなかったのか?」

『馬鹿じゃないしね!だいたいクラウドが…ヘックシュ!!』


「……もういい。出てこい」

『………猫は』

「考えてやる。いいから出てこい」


こんなしょうもない事で体調を崩されても困る。
とにかく早く出て来るように名無子を促せばまだ髪から水が滴り落ちるほど濡れていた。


「早く風呂に入ってこい」

やはりこんなに冷めきった体ではまずいだろうと風呂をすすめる。

『じゃ、この子と入ってくる』

そういって風呂場へと猫を抱いて歩きだす名無子。
名無子の肩の上から顔を見せる猫とクラウドは目が合い、暫く見合っていると…猫は口角を吊り上げて目を細めてきた。




…笑っている。





アレは明らかに勝ち誇り、俺を馬鹿にし、蔑むような目をして、笑っている。




「名無子、ちょっとまて!猫は置いていけ!」

『ちょ、何すんのさっ!?』

名無子を止め、黒猫を取り上げる。
すると猫は俺から逃げようと必死にもがきだした。

『クラウド、猫ちゃん嫌がってるじゃん!』

「いいから名無子は早く風呂入ってこい!」

『やだ!一緒に入る。クラウドこの子逃がすでしょ?』

「……わかった。逃がさないから早く入ってこい」

『ホントに〜?』

「…ホントだ」






[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!