ヒメゴコロ
2
由香里はアニメオタクだ。
アニメが好きなくらいいいじゃないか!お前だって好きなものの一つや二つあるだろう!と私は思うのだが、世の中にはそれに対して偏見を抱いている人がいる。
由香里のいる三組の女子がそうだった。
「オタクってキモいよね。」
なんて普通に言うのが当たり前。
そう、由香里はわかっていたのだ。自分がオタクだと言えばクラスから弾かれる事を。だから由香里は全てを隠し、"普通の女の子"を演じてきた。
クラス替えをしてから、やっと出来た新しい友達とそれなりに仲良くやって、一生懸命今まで過ごしてきた。
しかし、その友達を綾香ちゃんによってまた取られてしまったと言うのだ。
なんだかもう嫌になった。
疲れてしまった。
そう由香里は言った。
「担任の松井先生に家庭訪問の時言われたの。すみませんって。本当は私、二組になるはずだったんだって。私だけ入れ忘れちゃったんだって。あはは、おかしいよね。」
渇いた笑いに胸が押し潰されそうになる。
気がつかなかった。
由香里が苦しんでいたことに。
それと同時に感じたのは、私達に相談してくれなかった由香里への失望。
色んな思いがぐちゃぐちゃでグルグルと渦を巻く。
どうして司に話したらいけないの、とか…。
何故もっと早く言ってくれなかったの?とか…。
言いたいことはたくさんある。
しかし、今言うわけにはいかない。司を安心させるためにも、由香里に学校に来てもらわなければならない。
けど、由香里が辛かったのも事実。すぐになんか学校に来れないだろう。
「ねぇ由香里、今すぐとは言わないから…来れるようだったら学校に来て。司も凄く心配してるから。」
由香里は「うん」と返事をしてくれた。しかし、その言葉に私はなお複雑な気分になった。
それから私は司への伝言を預かった。
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