ヒメゴコロ
2
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更に二日目たった朝。
部活の朝練を終えた司が私の元へ小走りでやって来た。
「蘭、話があるの。」
沈んだ声で言う司に私は黙って頷いた。
司にジャージの袖を引っ張られながら教室を出ると、司は廊下の壁に寄り掛かって俯いた。
「司、どうしたの?」
「……あのね、由香里が部活に来ないんだ。」
「え?学校まだ休みなの?」
三日前は休みだったと聞いた。まだ、休んでいるのだろうか?
「わかんない。でも休む時は連絡してって言ってあるのに…。」
何にも連絡がないんだ、と目を伏せる。
「何か、蘭は由香里から聞いてない?」
「いや、何にも聞いてない。どうしたのかな。」
「…わかんない。今日、由香里の家に後輩の子と行こうと思う。ちゃんと話したいから…。」
「…わかった。何かあったら教えて。」
そう言うと司はコクリと頷いた。
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次の日。
朝練を終えた司が教室に入って来たを見て、私は彼女に駆け寄った。
「司、今日由香里は部活来た?」
そう尋ねると司は机にカバンを置いて、首を横に振った。
「…来なかった。」
「そっか…。」
「………蘭、廊下行こ。」
私は頷き、廊下に出た。
司は昨日のように壁に寄り掛かり、下を向く。
「…司、昨日はどうだったの?由香里の家、行ったんだよね?」
優しめの声色で問い掛けると、司はぽつりぽつりと話し出した。
「行ったよ、部活の後、みんなで。けど、会ってくれなかった。家にすら入れてもらえなくて……由香里、絶対家にいたのに…。」
今にも泣き出しそうに顔を歪める司にかける言葉が見つからない。
私は唇を噛んだ。
「司、今日は私が電話してみる!何かわかったら教えるから、ね?」
だから、だから
悲しそうな顔、しないで…
もう、君の悲しそうな顔は
見たくないの…。
「だから心配しないで!」
そう言って私は司に笑いかけた。
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