ヒメゴコロ
9
彼を見た瞬間、本当に嬉しかったんだ。
由香里を見た時よりずっと。
あぁ、好きなんだなって、改めて思う。
もうこの想いは変えられない程強く、強くなっている。
それが 怖い。
誰かを好きになることは素敵なことなのに。
愛することのできる相手がいたら、明るい未来があるかもしれないのに。
なのに、私は人を 愛せない。
胸が苦しくなる。
普通の恋を普通に出来たらどんなによかっただろう。
苦しみと悲しみ、痛みや辛さしかわからない私はどうすればいい?
じんわりと目に涙が浮かぶ。
私は人を拒絶してしまう。
もうどうすることもできない。
だから、だから誰か、
誰か、私を…………
私を 助けて……
目から一筋の雫が流れ落ちる。
悲しみと、それらを植え付けた父への憎しみは日々募るばかり。
これ以上自分の弱さのせいで涙が溢れないよう、私はきつく目を閉じた。
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