ヒメゴコロ
6
「やっほー、みんな食べてるー?」
「食べてるよー。チョー量多いよねー。」
そう司が答えると、彼女達は困ったような笑みを浮かべた。
「そうだよねー。てか、さ、お願いがあって来たんだよね。」
「どうしたの?」
「実は、百合(ユリ)ちゃんと知里ちゃんが喧嘩しちゃって…夕食食べてくんないんだよね。だからさ、誰か食べに来て!」
お願い!と言う二人に目を丸くする。百合ちゃんは普段ものすごく大人しい子で、知里ちゃんはテンションの高い明るい子。二人が喧嘩?
すると司がこちらを見て頷き、合図する。
「よし、この司様が行ってやろうじゃないの!!」
「じゃあ私も!」
私と司は立ち上がり、意気揚々と隣の部屋へ。
中は大分大変なことになっていた。
机を挟み、百合ちゃんと知里ちゃんがそっぽを向いている。重たい空気をなんとかしようと、他の女子が二人に話しかけている。
ちなみに喧嘩の理由は他の子もよくわからないらしい。
「ささ、入って入って!んで一杯食べて!」
「うん、失礼しまーす。」
私達は頷き、部屋に入る。司は知里ちゃんのそばへ、私は百合ちゃんの隣に腰をおろした。
うっわーちょー無表情だわ…
「はい、蘭。」
一人が私に小皿に盛ったすき焼きを渡してくれた。正直もう食べたくないが、仕方ない。
「ありがとう」と笑顔で受け取り箸を持つ。
熱そうなそれにフーと息を吹きかけながらシラタキを箸で挟み、百合ちゃんに話しかける。
「ね、私シラタキ好きなんだよね。おいしくない?」
「…え、うん。」
話しかけてくるとは思わなかったのだろう。少し驚いた顔をしている。
喧嘩の話しはしたくないだろうから明るい話題で攻めてみるか。
「好きなら蘭、これも食べなよ!はい!」
そう言ってお玉で入れられたのは私のライバル、豆腐さん…。
ちょ、お前、そこはシラタキだろ!とツッコミたくなる衝動を必死に抑える。
「え〜!こんなに食べれないよ〜。」
「いけるいける!蘭だもん!」
「え〜だってウチらもまだ一杯残ってるんだよ。ね、食べれないよね、百合ちゃん。」
「…うん。」
複雑そうな表情の百合ちゃんに構わず話しかける。
熱そうな豆腐を半分に割り、箸で掴む……はずだった。
「…うぉおあっと!」
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