ヒメゴコロ 3 「じゃあ、またね。」 無理矢理口角を持ち上げ、微笑みながら由香里に別れの言葉を告げる。 「うん、じゃあね。」 そう言って由香里は手を振ってくれた。 私は家を出て、自転車で下り坂をものすごいスピードで下る。 目からは我慢していた涙が溢れ出した。 由香里には"嘘"を言って欲しくなかった。 その"嘘"が誰かを苦しめているのを見るのが辛い。 司もきっとまた泣くんだろうな…。 坂を下り、左右を田んぼに挟まれた真っ直ぐ続く道をひたすら走る。 私の心とは裏腹に、暖かな風が頬を撫でる。 鼻をすすりながら家路についた私は、一人自分の部屋にこもって声を上げて泣いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |