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まほろば 
GIFT2


「兄さんが生きてる…だって?」


俄かには信じられず、ライルは切れ長の目を細めて、目の前のスメラギを見た。


「ええ。情報元は確かよ。罠の可能性は低いわ」


それにスメラギもしっかりと頷き返した。
そう言いながらも、さすがのスメラギも戸惑いを隠しきれないようで、手放しで喜んでいるようには見えなかった。

確かに今になって初代ロックオンが生きていたと揺さぶりをかけてくるには時期が遅すぎる。
アロウズが瓦解し、一から体勢を立て直さなければならない連邦に、一応は休戦状況にあるソレスタルビーイングにちょっかいを仕掛ける余裕があるとは考えにくいからだ。
それに、本当にロックオン…ニールが生きていて。敵の手の内にあるのだとすれば、とっくに人質として利用されていただろう。

しかし、敵ではない第三者に保護されていたのだとしても、今になって連絡を取ってくるのは不自然だった。
幾ら10年以上も会っていないライルであっても、刹那たちの兄への思慕を思えば、生きているのであればもっと早くに知らせてくるはずだ、と思える。
それができない状況…或いは状態だったのだろうか…。
兄が死んだとされる戦況を思えば、今まで意識がない状態であったとしても可笑しくはない。

などと様々な最悪な状況を思い浮かべて、どんどん表情を険しくしていくライルに、スメラギは考えを読んだように苦笑を浮かべながらつづけた。


「確かにあの戦いの後遺症でもう戦える身体ではなくなってしまっているようだけれど、今は心身ともに元気でやっているようよ。その点は安心してちょうだい」


先ほどより幾らかスメラギは表情を緩ませている。
だが、それなら何故会いに来ようとしないのかという疑問が残る。
それに、幾ら肉親だからと言っても、ライルにだけ内密に知らせてくるのは可笑しい。
あれだけ慕われていたニールの生存を、本来ならクルー全員に知らせるべきなのではないのか……。


「で?兄さんは今どこにいるって?」


もったいぶるかのように中々核心を話さないスメラギに、ライルもだんだんと焦れてきた。

ニールが生きていて、尚且つ元気にやっているのだと言うのが本当なら、本人に問い詰めるのが一番てっとり早いと思う。
こちらは10年以上も音信不通で、己のあずかり知らないところで。しかも、それから大分経ってから唐突に死んだのだと聞かされたのだ。
更に、今また今度は実は生きているなどと、これまた唐突に知らされて。ライルは正直かなり頭にきていた。
話の内容によっては一発くらい殴ってやらなければ気がすまないといったところだ。

そして…そうしてから、今度こそちゃんと兄と向き直ろうとライルは思う。
14歳のあの時。家族を目の前で失った兄の苦悩を、理解してやれず。理解しようともしなかったこと。
兄を孤独な復讐者にしてしまったことを…ライルは悔やんでいた。






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