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A HAPPY NEW YEAR グラニル




宙に浮かび上がる大きな数字が11:59に変わる頃。
すでに歓声で盛り上がっていた場が、最高潮を迎えようとしてた。

もはや聞こえてくる声は意味を持たない悲鳴のような歓声。
誰もが新年に変わる瞬間を心待ち。カウントダウンが開始された。

ニールもそれに倣って声を張り上げようと口を開きかける。
だが、隣から腕が肩を掴んできて。強引にニールの身体を引き寄せた。
腕の持ち主は抱き込むようにしてニールをその場から攫っていく。

その強引な腕を振り払おうか一瞬悩んだが、その腕の持ち主がニールの恋人であるグラハムのものであるのは分かっていたので。ニールは大人しく従った。
彼が突飛な行動にでるのは珍しいことでもなかったし。折角の盛り上がりに水を差すのも気が引けたからだ。

人込みを掻き分けるようにして部屋の隅に連れこまれ。壁に背中を押しつけられる。


「おい。なんなんだよ、いきなり…」


グラハムの意図が判らず。強引な手段を咎めるように睨めば。息がかかりそうなほど間近にグラハムの端正な顔が迫っていて、ニールは息を呑む。
すでにカウントダウンは終盤を迎え。数字が「12:00」に変わったと同時に一気に照明が落とされた。


「ん!…んぅっ」


視界が暗闇に閉ざされた瞬間。唇を塞がれ。文句も疑問も全て奪われる。

周りからも歓声にまじって次々と交わされるリップ音。
ニューイヤーパーティーでは、新しい年を迎えた瞬間に、老若男女問わず誰とでもキスを交わすのが習慣だ。
もちろん、唇は恋人同士。そうでなければ頬や口以外のどこかが定番である。

そんな数分の余興も終わり。再び照明がつけられた後は、派手なクラッカー音が鳴り響き。更なる熱気とともに歓声がわく。


「お、い…いつまでやってんだ…っ」


ニューイヤーのキスにしては濃厚な口付けに息を乱されたニールは、明るくなっても離れないグラハムの顎を掴んで引き剥がした。

周りはお祭りに夢中で、隅に居る2人になど気にする者などいないと分かっていても。こんな公衆の場でキスを続けられるほど図太くはなれない。


「すまない…つい、夢中になってしまった」


対するグラハムはと言えば。あまり周りを気にするタイプではないのだろう。
謝罪しつつも少しも悪びれない笑顔で見つめてくる。


「どうしても、姫の新年初のキスを奪いたくてね」


そう言いながらまた頬に唇を寄せるグラハムに、ニールは溜め息しか出なかった。
隣に居たのだからこんな隅にまで連れ込まずとも、最初のキスは交わせたはずなのだ。
他の人間とキスをするのを阻止したかっただけなのは明白で。そんな独占欲丸出しの相手に、怒りが涌いてこない時点でニールも毒されているとしか言えない。


「しょうがねぇ王子様だな」


今年もこの強引で我慢弱い王子様に振り回される予感をひしひしと感じながらも。ニールは微笑を浮かべて、グラハムの頬にキスを返した。






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あきゅろす。
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