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いい兄さんの日ライルside



「兄さん」


最初に自分と同じ姿に呼びかけたとき。
それまでの密だった二人の距離に、決定的な一線を引いた瞬間だった。

同じ刻に生まれ。同じ姿・声を持ち。同じ時間を共有していても。
ニールはライルとはまったく違う人間なのだ、と。
以前から少しずつその違いに気づいてはいた。

だが、それを認めたくない気持ちがあったから。
ニールが己の一部ではないと認めるのが恐ろしかった。
一部でなくなってしまえば。誰からも愛されるニールは、ライルから離れていってしまうと思ったからだ。

先ほどだって、ニールは他の子供たちに同じように笑顔を見せ。同じように優しく接していた。
ライルに向けられるものと同じように……。

その時にライルは気づいた。
自分はニールの特別になりたいのだ、と。
そして、それは一部であっては叶わないのだとも。

同じでは駄目なのだ。
自分達は違う人間なのだ、と。
ニールにも解からせる必要があった。

だから、ライルは「兄さん」と呼ぶ。
俺たちは一部などではなく。個を分けた別の人間なのだ、と。ニールに知らしめるために。






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