罪と罰1 この世に神はいない。 敬虔なクリスチャンだった両親の子供として生まれ。あの運命の日まで、ニールもなんの疑いもなく神の存在を信じていた。 だが、敬虔なクリスチャンだった両親と妹は、気まぐれにやってきた盗賊たちによって無惨に殺され。たまたま村を離れていたニールと双子の弟だけが残された。 何故…神が見守るこの世界で、なんの罪もない人々が無惨な死を遂げなければならないのか。 そして、信仰心の欠片もない人間が、無法の限りを尽くしながら、のうのうと生きていられるのか。 この世に神などいない…っ! 少年だったニールは絶望し。その日に神を捨てた。 そんなニールのもとに、一人の悪魔が現れたのは。家族や村の人々を殺した盗賊への復讐のために、双子の弟を置いて旅を続けている最中だった。 金髪の美しい悪魔は、ニールの耳元に優雅な声で囁いた。 「神の代わりに私が君を救ってあげよう」と。 つまりは魂を代償に、復讐を手助けしてくれると悪魔はいう。 それはニールにとって、どんな言葉よりも甘く響いた。 もとより復讐のために命さえも投げ打つ覚悟だったのだ。 そして復讐のために手を汚した己が、家族のいる天国に行けるとも思ってはいなかった。 だから、ニールは迷わず悪魔の手を取り、復讐を果たす方を選んだのだ。 悪魔はニールとの約束を違えず、復讐を遂げることができた。 その代償に、悪魔の棲まう魔界の城へと連れ去られ。そこでありとあらゆる辱めを受ける日々を過ごしても、己が望んで選んだ道だと、諦めていた。 だが、悪魔に身も心も売ってまで果たした復讐だというのに……それを嘲笑うかのように、殺したはずの男がニールの前に悠然と佇んでいる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |