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And the world begins to move3



ずっと…ずっと。焦がれた湖面のような碧い瞳がティエリアを映す。


「ぁあ…ロックオン……いや。ニール・ディランディ……っ」


ティエリアは敢えてコードネームではない彼の本名に変えて呼びかけた。
何故ならもう「ロックオン・ストラトス」は彼の双子の弟へと彼の志とともに受け継がれているからだ。
そして…ティエリアが欲しているのは、CBの仲間である「ロックオン・ストラトス」ではなく。ニール・ディランディという、一人の人間だから……。


「ティエ…リア……?」


たどたどしく掠れた声がティエリアの名を紡ぐ。深い湖面の瞳をゆらゆらと揺らめかせ。ティエリアへと焦点を合わせた。
その瞬間、ティエリアは電流が流れたような衝撃を受けて全身を震えさせる。思わずニールの白い手を取り。その手を自身の頬へと押し当てた。
手袋越しではないニールの白い手は、いまだひんやりと冷たかったが。それでも初めて感じる生の彼の手の感触はティエリアの心に暖かさを齎した。


「俺、は…まだ、夢見てんのかねぇ……?」


ティエリアを優しい目で見つめたまま、ニールは不思議そうにそんな事を呟く。
それもそうだろう。ティエリアはまだ、ニールにこんな素直な自分を見せたことなどなかった。ニールから与えられた優しい心を、彼には何一つ返すこともできず。失ってしまったのだから。

失った。と、そう思っていた。


「いいえ。夢などではありません。貴方は……生きている」


それはニールに言い聞かせるというよりは、ティエリア自身が彼の生を確認するような囁きだった。


「…そうか…俺は……生き残っちまったのか……」


次第に意識がはっきりしてきて記憶を取り戻したのか、ニールの瞳に暗い翳が落ちる。
いまだに彼の心は復讐に囚われたままなのだろうか。復讐のために命さえ投げ出した彼のことだ。その暗い影から簡単に逃れることなどできるはずもない。

だが…それでもいい。
今はまだ___。

彼は生きている。生きていさえすれば、いくらでも変わってゆける。
ティエリアのように。
彼がティエリアを変えたように、今度こそティエリアが暗い影に囚われたニールの心を解きほぐす。
どれほどの時を要するとしても……必ず……彼の心に自分という存在を刻んでみせる。


「ニール…ニール・ディランディ。僕は貴方を愛しています」
「…っ…」
「必ず貴方の世界を変えてみせる」


その決意を示すように、ティエリアはニールの手の甲に唇を押し当てた。






_____そして世界は動き出す。





end

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あきゅろす。
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