From Your Valentine2
そちらに目を向ければ、扉の横に備え付けられたパネルが来客を示すランプを点滅させている。
こんな時間に誰だろう?と、訝しく思いながらも、ライルはパネルを操作して相手を確認する。
「フェルト?」
これまた珍しい客に、ライルはますます訝しげに眉を顰めた。
こんな時間に男の部屋を訪ねるなんて…と思いかけて、フェルトの背後に隠れてよく見えなかったが、もう一人巻き毛の少女を見つけて、ライルは表情を和らげた。
何の用かまでは判らないが、2人きりでないならば問題はない。
「よぉ、お二人さん。こんな時間に、どした?」
扉を開けて軽い口調で問えば、フェルトは手に持っていた袋をそっと差し出した。
「俺に?」
綺麗にラッピングされた袋は、何かのプレゼントようだ。
しかし、別に誕生日でもなければ特別なイベントでもない。
こんな物を貰う理由が判らず、ライルは首を傾げた。
「今日はバレンタインというイベントの日なのです!」
ライルの疑問に、フェルトの背後からぴょこんと飛び出した巻き毛の少女ミレイナが元気よく答えた。
「バレンタイン?」と、聞きなれない響きに、ライルが更に首を傾げると、ミレイナは更に詳しく説明してくれた。
「はいです!前にこちらにいらした沙慈さんから窺ったです。沙慈さんの故国では、今日は好きな殿方にチョコをプレゼントする日なのだそうです」
ニコニコと楽しげに話すミレイナに、ライルは「はぁ」と相槌を返しながらも、好きな人という言葉にひっかかりを覚える。
「おいおい、それなら余計に俺なんかが貰っていいのか?」
フェルトがニールに淡い恋心を持っていたのは薄々気づいていたが、ライルに渡してくるというのは腑に落ちない。
まさかライルからニールに渡して欲しいなんて言うつもりだろうか…。
ライルとニールの関係を知るはずもないフェルトに罪はないが、もしそうだとするならかなり苦い気持ちになる。
「それと、お世話になっている人にあげる義理チョコというものもあるです!」
沈みそうになるライルに、明るい声でミレイナが心底楽しげに続けた。
「義理」を強調した言い方に、流石のフェルトも「ミレイナ!」と咎めの声をあげる。
きっと他のクルーにも同じように悪戯を仕掛けているのだろう。
まだまだ幼さが残るミレイナの無邪気な顔に、ライルは呆気にとられた後、プッと吹き出した。
「ははは!義理、ね。まあ有難く頂いておくよ。サンキュウな」
別の意味ですっかりミレイナの悪戯にしてやられたライルは、もはや笑うしかなかった。
「あ、あの…。こちらこそいつも有難う…っ」
悪戯半分のミレイナとは違い、フェルトは純粋に感謝の気持ちで持ってきてくれたのだろう。
頬を赤くして言うフェルトに、ライルは心の中で「ごめん」と謝った。
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