[携帯モード] [URL送信]

鋼の錬金術師
帰郷1

「やっとついたね……少佐、マリィ。ここがボクたちの故郷、リゼンブールです」

木箱に入ったアルフォンスが、懐かしそうに辺りを見渡しながら言った。

「ん……っ!」

マリーゴールドは、長旅で固まった身体をほぐすように、大きく伸びをした。

「うむ……空気がうまい。静かで、いいところだな……」

アームストロングもゆっくりと、目の前の緑豊かな自然が造り出す空気を、胸いっぱいに吸い込んだ。

澄んだ空に、延々と続く草原。
その彼方には、山々が聳え立っている。
街のように雑踏もなく、耳障りな音も無い。
微かな風の音が聞き取れる程、穏やかな空気。

セントラルのように、遮るもののない空を、アームストロングはゆったりと見渡した。




リゼンブールの駅前には、馬車がやっと1台通れる幅しかない道が、緩やかなカーブを描いて伸びていた。
その両側には青々とした草が繁り、小さく赤い屋根の家が見える。
高い屋根は、サイロだろうか。


「あっ、エド!羊!」

マリーゴールドが、羊の群れを指差した。
子どものようにはしゃぐマリーゴールドに、エドワードは笑う。

「羊なんか、後でいくらでもかまえるぜ。取り敢えず、ばっちゃんの家へ行こう」

黒のタンクトップ姿のエドワードは、トランクを揺らして歩き出す。
赤いコートは、傷の男との戦いで、ボロボロになってしまっていた。

「うん!」

その後ろを、古ぼけたトランクを下げたマリーゴールドがついて行った。




「アルフォンス・エルリック、遠慮など、お主らしくないのではないか?」

荷馬車の轍(わだち)が残る道を歩く2人の背中を見ながら、アームストロングが言った。

「え?ボクは遠慮なんか。今だって、こうして少佐に―――」

「そうではない。マリィ殿だ」

「マリィ?少佐、どういう意味……?」

東方司令部から担いで貰っていることではないと気付き、アルフォンスはアームストロングを見下ろした。
アームストロングも、アルフォンスを見上げる。

「お主も、好いておるのだろう?」




.

[次へ#]

1/25ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!