鋼の錬金術師 疑念05 「ところで」 マスタングは、マリーゴールドに視線を移した。 「鋼のとアルフォンスは故郷に戻るとして‥君は、家に帰るのかね?確か家は、カールフェルトだったな」 北部に近い街、カールフェルト。 広大な土地と、北部の山々から流れ込んでくる豊富な水で、アメストリスきっての農業地帯。 特に葡萄の栽培が盛んで、それで製造されるワインは、カールフェルトの名産品となっていた。 自分の出身地を知っていることに疑問を抱きつつ、マリーゴールドは答える。 「……いえ、このまましばらく、エドとアルと一緒に旅をします。それに、カールフェルトには住んでないんです」 「ほお…どこに住んでいるのかね?」 「ボンクールです」 マスタングは、僅かに眉をひそめる。 ボンクールは、カールフェルトとは正反対の南部の外れの地だ。 大した産業もなく、枯れた土地に貧しい村が幾つかあるだけの場所だった。 「ルイーニ氏は、あの屋敷と土地を手放したのかね?」 「…はい」 「何かあったのかね?あの屋敷と葡萄畑を、君もお父上も大層気に入っていたようだったが?」 「あ…いえ…」 「錬金術は、いつ習ったのだね?」 畳み掛けるようなマスタングの質問に、マリーゴールドは困惑する。 「あ、あの……」 「もういいだろ、大佐。俺たち、早く出発したいんだ」 エドワードが、質問を遮った。 苛立ちと敵意を含んだ金眼が、マスタングを睨み付ける。マスタングは苦笑した。 「あぁ…。何かあったら、今度はすぐに報告したまえ。アームストロング少佐、駅まで車で行くといい。宜しく頼む」 「承知しました」 「へいへい」 アームストロングが頷くと、ぶっきらぼうに返事をして、エドワードは立ち上がる。 「すいません、アームストロング少佐」 「気にするな。軽いものよ」 アームストロングは、アルフォンスを肩に担ぎ上げた。 ハボックがドアを開けると、そのまま部屋を出る。 先程は彼に歓声を上げていたマリーゴールドだが、無言で立ち上がりアームストロングの後に続いた。 エドワードが、一番最後に部屋を出ようとした時 「鋼の」 マスタングが呼び止めた。 「タッカー邸で、何かあったのか?」 . [*前へ][次へ#] |