鋼の錬金術師 疑念03 執務室のドアが開いた。 「皆、待たせたな」 マスタングとヒューズが、連れだって入って来る。 「3人とも、心配したぞ。まあ、無事で何よりだ」 執務机の前に置かれた上等なソファに座り、エドワードはヒューズに苦笑いをする。 隣に座るマリーゴールドは、無言で頭を下げた。 「無事って言えるかどうかは、分かんないけどね」 「大佐、あの、タッカーさんは……」 アルフォンスは、今日は木箱に入っていた。 夕べは夜遅くにチェックインしたからいいが、片足だけの鎧姿を人に見られる訳にはいかない。 運んだのは、勿論アームストロング少佐だ。 「あぁ、それはもうヒューズが調べた。タッカー氏は殺害された。犯人は間違いなく、君たちを襲ったあの男。傷の男(スカー)だ」 あっさりと、マスタングは告げた。 彼の、同情の欠片もない冷たい言い方に、エドワードとマリーゴールドは、一瞬顔を見合わせた。 「昨日だけで、3人も殺されちまった。憲兵にタッカーに、それからタッカーの娘さんだ」 ヒューズが腕を組んで、痛まし気に言った。 「娘さん」という言葉に、地下の研究室にあった写真を思い出す。 「あの写真……やっぱりタッカーさんは子供がいたんですね」 「おうよ。しかもその娘、傷の男に殺される前にタッカーに――」 「ヒューズ!!」 その先の言葉を、マスタングが遮った。彼の声も顔も、厳しかった。 ヒューズは、慌てて言葉を濁す。 「――っと、いや、これはお前らには関係ない話だな。悪い、忘れてくれ」 3人は、ただ黙って聞いていた。 「厄介な奴が現れたものだ。だが、私の管轄に来たからには、これ以上好き勝手にはさせん。次に会った時は、問答無用で――潰す」 部屋の中に、重苦しい沈黙が訪れた。 それを吹き飛ばすように、ヒューズは明るく話し掛ける。 「さて、辛気臭え話はこれで終わりだ。エド、アル、これからどうする?」 「アルの鎧を直してやりたいんだけど、この腕じゃ術を使えないしなぁ」 右肩を押さえながら、エドワードは壁際にいるアルフォンスを見た。 「我輩が、直してやろうか?」 いつの間に軍服を脱いだのか、上半身裸のアームストロングがポージングしていた。 「「遠慮します」」 力いっぱい、アルフォンスは否定する。 「なぜ脱ぐ…?」 ウンザリした顔で、エドワードは呟いた。 「そうですよ、少佐。女の子の前で。マリィちゃんがびっくりして――」 ホークアイがアームストロングを咎める。だが 「…………」 「マリィちゃん…?」 マリーゴールドは、目を見開いてアームストロングを見ていた。 「スゴーイ!!」 「え?」 . [*前へ][次へ#] |