鋼の錬金術師 記憶01 ふたりが茫然としていると、階段を降りて来る足音が聞こえてきた。 ハッとして振り返ったふたりの目に、マリーゴールドが映った。 「マリィ!起きて平気なのか!?」 「そうだよ、寝てなきゃ!」 驚いて駆け寄るふたりに、マリーゴールドは笑顔を向ける。 「大丈夫よ。心配かけてゴメンね。エド、ありがとう」 自分に掛けられていたコートを手渡す。 「あぁ………本当に、平気なのか?」 訝し気に、エドワードは顔を覗き込んだ。 「うん。私も、手掛かりを探したいの」 まだ顔色はよくないが、コートを受け取った時に触れた指は、だいぶ体温が戻っていた。 エドワードは、彼女の言葉に頷く。 「わかった。俺たちはタッカーさんの研究室を、もうちょっと調べてみる。マリィは、書斎にある研究資料を調べてくれ。何かわかるかもしれない」 「うん、わかった。待ってるね、エド、アル」 手を振って、研究室から出て行く。 その後ろ姿に、アルフォンスも声を掛けた。 「すぐに戻るね、マリィ」 マリーゴールドが居なくなると、ふたりは研究室の奥へと進んだ。 アルフォンスが照明のスイッチを入れると、薄暗い明かりが灯る。 「ここは…錬成した合成獣を保管しておく部屋みたいだな…」 「檻が壊れてるね。合成獣たちが、自分で壊して逃げちゃったのかな?」 檻の中を覗き込みながら、アルフォンスは言う。 部屋の中に積まれた檻は、鉄格子が曲がっていた。 「まさかタッカーさん、自分の造った合成獣に襲われちゃったんじゃ………」 振り返ると、エドワードは壁を向いていた。 「そうじゃない。見ろよ、これ」 エドワードが指差した壁には、大きな穴があいていた。砕けた破片が、辺り一面に飛散している。 「合成獣じゃ、こんな穴はあけられない。多分、この穴をあけたヤツに、タッカーさんは襲われたんだ」 ふたりは穴を覗き込んだ。水の流れる音が聞こえる。 「この先は、下水道に続いてるみたいだね」 「よし、行ってみるぞ、アル」 アルフォンスを見上げて言うと、彼はビクッと肩を跳ね上げた。 「えっ!?行くって、下水道に?で、で、でもっ!!」 躊躇うアルフォンスを尻目に、エドワードは暗い穴へ入って行く。 「何してんだよ、早く来いよ。置いてくぞ」 _ [*前へ][次へ#] |