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鋼の錬金術師
       02

少年はカウンターに陣どり、口いっぱいにパスタを頬張る。
隣りの椅子に座る鎧は、自分に注目しながら通り過ぎて行く人々を眺めている。
2人が座る店の屋根には、ラジオが置かれていた。


「あ〜旨かった。ごっそさん」

少年は、満足気にフォークを皿の上に置いた。
その時、ラジオからシワがれた男の声が流れだした。


『この地上に生きる 神の子らよ 祈り信じよ
されど 救われん』


「ん…?」

アイスコーヒーが入ったコップのストローを加えたまま、ラジオを見上げる。


『太陽の神は 汝らの足元を照らす
汝らを その罪から救う』


「これって、ラジオで宗教放送?」

2人は顔を見合わせる。

『太陽神の代理人にして 汝らが父ーー』


「神の代理人って…何だこりゃ?」

怪訝な顔をすると、カウンターの向こうから、店の主が口を挟む。

「あぁ、これはコーネロ様だよ」

少年はキョトンとして、店主を見つめる。

「誰?」

「コーネロ様を知らんのかい!?太陽神の代理人、レト教の教主様さ!」

驚きのあまり、声が大きくなる。
その声に、周りの客たちが会話に割り込んできた。

「教主様の『奇跡の業』ってのが、そりゃあもうスゴいのナンの」

「ありゃあ、まさに神の御業だね」

口々に、賛美の言葉をまくし立てる。少年は、それを聞くとニヤリとした。

「…コーネロ教主様か。なあ、おっちゃん。
教主様ってのは、一体どこにいるんだ?」

「教主様なら、いつも神殿におられるさ。この道を真っ直ぐ行けば、すぐだよ」

店の前にのびる道を、指差した。

「レト教の神殿か…よし、そうと分かればグズグズしてらんない。行くぞ、アル」

カウンターに手をつき、勢いよく立ち上がる。

「うん」

鎧も立ち上がったが、頭が天井にぶつかった。

「あっ」

声を上げると同時に、天井に置いてあったラジオが地面に落ちた。
ガチャンと音を上げ、部品が飛び出す。

「あーーっ!!うちのラジオが!!」


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あきゅろす。
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