鋼の錬金術師 東方司令部05 「しかし、怪物が本当にいるんだとしたら。そのコーネロって奴を、少し調べてみる必要があるな」 掴んだ手掛かりに、ヒューズは勢い込む。 「コーネロ教主は、今もリオールに居るんだな?」 マスタングの確認に、アルフォンスは言いにくそうに、口を開く。 「それが……」 言い澱む弟に、エドワードが後を続けた。 「殺されたんだよ。俺たちの目の前で。地面に、吸い込まれていったんだ」 3人に甦る、その時の凶々しい情景。 地面に出来た黒い闇ーー ヒトとは思えない容姿ーー 断末魔の悲鳴ーー マリーゴールドは、身震いした。 せっかく掴んだ手掛かりの消失に、マスタングはエドワードを咎める。 「鋼の。そういう事は、すぐに報告したまえ」 「まあ今日の所はいいじゃないか、ロイ。エド、アル、どういうことだ?」 取りなすヒューズに感謝の眼を向けて、アルフォンスが続けた。 「傍に、怪しい女の人がいて。その人の仕業だと思うんですけど……詳しい事は、分からなくて」 「すぐにその人も、地面に溶けるように消えたんだ」 「溶けるように、なぁ…」 3人の証言を疑うわけではないが、にわかには信じられない。ヒューズは、そんな顔をした。 「………………」 「あ、そういえば……」 考え込む2人を前に、エドワードは何やら思い出し、コートのポケットに手を入れた。 「なあ、大佐。この指輪、どう思う?」 広げた掌には、あの時手渡された、赤い指輪がのっていた。 _ [*前へ][次へ#] |