鋼の錬金術師 02 再び、コーネロを追って走る。 「アル、左じゃない?」 マリーゴールドは、突き当たりのT字に別れた通路を見て言った。 その声に、アルフォンスは辺りを見渡す。おそらく右は、聖堂の方角だ。 前を走るエドワードは、通路を右に曲がる。アルフォンスは、慌てて呼び止めた。 「違うよ!兄さん、こっちこっち!!」 「おっと!」 急ブレーキを掛けたエドワードは、そのまま勢い良く方向転換した。 ゴンッ!!! 「ぬ゛おっ!!」 「エドッ!!」 鈍い音を立てて、エドワードはアルフォンスの鎧に、顔面からぶつかった。 「何やってんだよ!アル〜!!」 顔を押さえたせいで、くぐもった声になった。 マリーゴールドが傍へ来る。 「エド、大丈夫!?」 「〜〜〜〜」 エドワードは、痛みに耐えていた。 「兄さん、あれ……」 兄思いのアルフォンスが、エドワードのケガを気にもせずに、前方を凝視している。 アルフォンスが指差す薄暗い通路の先には、ひっそりと、女性が立っていた。 「キミは…誰?」 何も言わない女に、震える声で、アルフォンスは尋ねる。 すると、意を決したように、女は足を踏み出した。 片側で毛先だけ束ねた、薄翠の長い髪。 遺跡の壁画に描かれていそうな、古風な民族ドレス。 涼し気な、ブルーグリーンの瞳。 胸にはーー赤い石の首飾り。 アルフォンスは、思わず後退る。 女は、エドワードとマリーゴールドの前で足を止めると、2人を交互に見た。 マリーゴールドも、見つめ返す。 女はエドワードと視線を合わせると、手を差し出した。 その手がゆっくり開く 「…?」 掌に、赤い琥珀のついた指輪がのっていた。 台座に填められた琥珀が、赤い光を放つ。 指輪と女の顔を、交互に見る。 彼女の瞳に強い意志を感じ、エドワードは右手を上げる。 機械鎧が、音を立てて指輪を摘み上げた。 「兄さん…」 アルフォンスが、恐々覗き込んで来た。 その間、女はマリーゴールドを凝視する。 あ、またーー 『ーーーー、ーーー』 『ーーー!?』 よく、聞こえない。お茶が冷めてしまう。 ーーーは、ドアをノックした。 ドアを開けると深々と頭を下げ、一礼する。 『失礼致します。お茶をお持ちしました。ーー様』 今度は、声だけじゃなかった。 脳裏に、映像が浮かぶ。 あれはーーお父様…? _ [*前へ][次へ#] |